矛盾した答えもないし、変にはぐらかそうともしない――疑うべき余地はないか?



「あー、それから……この島の今の状況は知ってるかねぇ?」
「はい、クノンさんから簡単に聞いたくらいですけど。確か、ユキさんの持ってる剣を巡って、帝国軍と敵対してるんですよね?」
「おー、それでちょっと言い難いんだけど……その帝国軍の隊長ってのが、お前の姉のアズリアなんだよねぇ」
「……!?」



驚きを隠せないでいる様子のイスラに、「なーに、心配するな」と軽い調子で言ってやる。

不安げなその瞳を見つめ、ニコリと柔らかく笑みを向けた。



「俺はアズリアが敵だとは思ってねーし、ましてや命を奪うつもりなんて微塵もねーからな」
「そうですか……良かった…」



安心したように笑みを浮かべ、息を吐くイスラ。

その様子が微笑ましく、俺にも自然と笑みが浮かぶ。



「ま、そう言う事情だから、家名は言うんじゃねーぞ?まだ島の住人全員が、和解で解決出来るって思ってるわけじゃねーからな」
「わかりました。忠告してくれて、有り難う御座います」



丁寧に礼を述べるイスラに、軽く苦笑しながら「どう致しまして」と返す。



「イスラ、俺に敬語は使わなくていいんだぜ?それに呼び捨てで構わねーし」
「いえ、そんな……気遣いは有り難いですけど……」
「ふーん……昔会った時は、あーんなに親密な関係を築いた仲なのになー……イ・ス・ラ・きゅーん」
「は……?」



イスラの隣に腰を下ろし、首に手を回して抱きつきながら耳元で名前を囁くと、その白い肌が面白いくらいに赤く染まっていった。

あっは、凄ぇ戸惑ってるー。



「うはは。冗談だよ、じょーだん♪」
「か、からかわないで下さいよ」
「悪い悪い。お前のねーちゃんと同じで、からかいたくなる顔してるから」
「ええっ、どういう理屈ですかそれ!?」
「考えるな、感じろ。ウククク」
「そ、その笑い方は怖いです」



その狼狽える様子があまりに可笑しかったため、どうしても笑いが漏れてしまう。

何とか笑いをかみ殺し、言葉を紡ぐ。



「ま、強制するつもりはねーからさ。好きな様に、自然に話してくれ」
「はい、それじゃあ、そうさせてもらいます」



無邪気な笑みを見せるイスラの頭をクシャクシャっと撫で、立ち上がって大きく伸びをする。



「じゃっ、話も一段落ついたことだし!散歩に行くかー、イスラ」
「外出ですか?でも、そんな急には……」
「心配ないって。肉体面での問題はないみてーだから、アルディラもクノンも許可してくれるって」



ニッと笑みを向け、イスラに手を差し出す。

差し出された手を、若干はにかみつつ受け取ったイスラだが――この感じ、きっとアレだなぁ……うん……。



「言っとくけど、俺は男だからな?」
「あはは……ユキさんってば、もうそんな冗談には引っかかりませんよ」
「……」


何を言うやらと言わんばかりのイスラ。

俺は満面の笑みを浮かべ、その手を"ちょっと"強く握り締める。
ちなみに、力加減の"ちょっと"ではない。


「〜〜〜〜っ!?」
「どっからどう見ても男なんで、間違わないようにねっ」



予想外の痛みを受け、涙目になって悶絶するイスラに向かって、とびきりの笑顔を向けた。


んー……これは記憶を無くしてるからってのは、いいわけにならねーよな!




第15話-終-
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