「本当のところ、何があったのです?」
「ええ……クノンから、伝言を頼まれて来たのよ」
「クノンから?そりゃまたどうして?」
「以前アティが、浜辺で助けた少年のことは知ってるでしょう?その彼、漸く話が出来るようになったの」



アティが釣り上げた……じゃなくて、助けたという少年か。

今の話を聞く限りでは、非常に喜ばしいことなのだが――アルディラの深刻な表情と、「ただ、ね」と濁した言葉が、何らかの問題が残っていることを物語っていた。



「兎に角、一度面会に来て欲しいの。詳しい説明は、あの子がしてくれるから」
「成る程ねぇ。だからわざわざ、アンタが直接出向いてきたと」
「そういうこと」



クノンがその少年を看ているから、アルディラが出向かざるを得なかったわけだな。

しかし今、カイル達は全員出払ってるし、俺達二人が勝手に船を留守にするわけにはいかない。



「なあヤード、俺が行ってきてもいいか?」
「構いませんよ。今、二人同時に出払うわけにもいきませんし……それに、そういうことはユキさんの方が適役でしょう」
「それは褒め言葉として受け取っていいのかねぇ」
「勿論です。話しやすさと人当たりの良さ、という意味でですよ」
「はは、面と向かって褒められると照れ臭いもんだ」



爽やかに微笑むヤードに、頬をポリポリと掻きながら笑みを返す。

んーむ、真面目に言われると気恥ずかしい。



しかしながら、俺がわざわざ行きたいと申し出た理由がある。

万が一、その少年が俺の知り合いだった場合――誰よりも早く会っておけば、何かと手回しが出来るからだ。
ヤードや他のみんなを欺くようで、申し訳ないが……っと、それは今に始まった事ではない、か……。



問題の少年の特徴が、俺の昔の知り合い――アズリアの弟に似ている以上、下手に身元を喋らせるわけにもいかないからな。





そんなわけで話は纏まり、クノンと例の少年がいるリペアセンターに向けて、俺とアルディラはゆったりと足を動かしていた。



「なあ、何でアティとレックスの所に行かなかったんだ?どうせ呼ぶんだったら、あの二人の方が良かった気もするけど」
「貴方達に会う前、一度行ったのだけど……」


アルディラはそこで言葉を切り、何かを思い出したらしく、クスクスと笑みを零した。


「学校の様子があまりに楽しそうだったから、水を差すのも悪いと思ったのよ」
「あぁ、成る程ねー」
「あの二人も、ちゃんと教師として振る舞えてるみたいだったしね」



そう言って、再び柔らかな笑みを浮かべたアルディラに、俺も笑顔で返す。
折角学校が順調に動き出したのだから、それを中断させてまで、あの二人を引っ張って来なくてもいいだろう。子供達も、授業を楽しみにしてるようだし。


これで後は、アズリア達と和解さえ出来れば、全てが丸く収まってめでたしめでたしなんだけど……そんなに上手くはいってくれないよねぇ。


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