目を覚ますと綺麗なバラ園だった
あの巨大な化け物と、アルテミシア・・・、
そうだ・・・、篠が・・・!慌てて周りを見ても何もない
あるのはバラ園と大きな壁、上を見るとイヴァラータ城があり
これは場内のバラ園のようだった・・・、


「どうして、私は、神殿で・・・、」
「誰?」


この声はと慌てて振り返る、長い黒髪に濃い桃色の瞳
間違いなくセシリア・イヴァラータであり
セシリアの口から真っ白な息が見えると彼女が生きてる事を実感する
とても寒い、よく周りと見れば真っ白な雪で全ては覆われており
空は厚い灰色の雲によって太陽は見えなかった

セシリアが生きているのに太陽が見えない・・・、いや逆に考えれば
セシリアが生きているからただ天気が悪いだけなのかもしれない



「あ、あの・・・、」
「今日はお客様はいないってお父様は言っていたけど・・・、まあいいわ
寒いでしょう?いらっしゃい」

「え・・・、」


セシリアは私の事を知らないようだった・・・、
黙ってセシリアについていくと客室へと通される
メイドは紅茶を出すと部屋を出て行ってしまう
残されたセシリア微笑むと首を傾げた


「貴方はどうしてお城の中にいたのかしら?軍の人にバレたら牢屋よ?」
「私も、分からなくて・・・、」
「本当に?何も分からない?」


記憶はある、ただ気づいたらこの世界にいて・・・、


ふと壁に立てかけられている鏡を見て目を見開いた
私の髪が綺麗な黒髪になっており慌てて両手を見る
真っ白な肌、これは、間違いなくノスタージャ=アフィリポアだった
私の母、ノスタージャに完全に似てしまった・・・、



「本当に、不幸中の幸いかしら、私に見つかってよかったわね」
「ここの国王は、セシリーア様じゃないのですか?」


ハッとし、素直にセシリアに聞くとセシリアはきょとんと
した様子で首をかしげる


「何を言っているの?現国王は私のお父様よ?」
「じゃ、じゃあ、今年は・・・、」
「水瓶年12月25日よ」



戻っている・・・、昔に・・・、私だけ?篠は?アルテミシアとの闘いは?
セシリアだって救えていない・・・、どうしたら、どうしたらいいの・・・、


「何か困っているようね・・・、私でよければ手助けするわ」
「あ、あの、アフィリポア王国にはここからどう行けば・・・、」

「アフィリポア王国が故郷なのかしら?」
「あ、い、いえ、知り合いが、いる国なんです・・・、」

「そう、ならアフィリポア王国までの交通を私の国から出しましょう
そうねえ、馬車で丸一日はかかるかしら、いいわ!貸してあげる」


セシリアはそういうと電話で誰かと話し始めた
そして私にお金と首都の宿の地図と名前が書いてある紙を渡した


「こんなに・・・、申し訳ないです」
「いいの、私、この城から出たことなくて、同じ女の子と話すのが
夢だったから・・・、しかもその女の子が困ってるなら手助けしなきゃ
こういうのなんて呼ぶのかな・・・、たしか・・・、」

「友達」

「そう、それ!貴方と私は、女神様がきっと引き合わせたのだと
私は思ってるわ、だから、私たちは友達、これでお相子よ」



セシリアは微笑んだ、つられて笑う
それから馬車のある城門前までセシリアと向かうと
既に馬車は用意されており、セシリア言われるままに乗る


「ありがとう、セシリア・・・!絶対に、絶対にいつかまた会いにいくから」
「ええ!待ってる!ずっと待ってるわ!」


ずっとセシリアは馬車を見守っていた


ずっとずっと、初めてできた友達のこれからを祈りながらずっと


馬車が消えるまで



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