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鐘の音で目を覚ます、ふと窓をみればどんよりと
空を灰色の雲が蔽っていた
慌ててベッドから飛び降りて窓を開ければ冷たい風が
頬をかすり、あれは夢だったのだと思わせる


「夢・・・?でも・・・、あれは・・・、」


おかしい・・・、セシリアに会ってからおかしくなったの?
でも生々しい夢は・・・、

「セシリア・・・、」

「おはようございます、花恵様」
「アイリン・・・、」
「どうかされましたか?」
「いいえ、何でもないです・・・、」


夢の中に出てきたアイリンではなく温かい笑みのアイリンに
少し安堵する・・・、ここは現実のイヴァラータなのだと・・・、


「アイリン、昔のイヴァラータってとても怖い国だったの?」
「セシリーア女王が納めていた時は一番平和でとても綺麗な国
でしたよ」

「ううん、違う、セシリーア女王のお父様、アルカヴァチノ王
が収めていた頃のイヴァラータ・・・、」


私の言葉にアイリンさんは「それは・・・、」と言ったきり
口を開かない・・・、
出される朝食が喉を通らない、セシリアは気づいていたんだ
あの頃から自分は幸せになれないのだと、気づいていた
でも分からないから私に聞いたのだろう


「セシリーア姫が女王になられてから、国は姿形変えとても
素晴らしい国になりましたわ、奴隷制度もなくし貴族と庶民の
格差を縮め、戦争を仕掛けるのではなく国を守る騎士団を作る
でもその前のイヴァラータ国はその逆でとても醜い国でした」


奴隷が平気でいて、暴力、罵倒、娼婦が地面で寝てて小さな
子供がゴミを漁っているそんな風景が裏路地に入れば沢山見れた
私は、こんな国に来てしまったのを後悔していた
でもセシリーア女王について働き始めてからこの国が良くなる事を
願うようになった、セシリーア姫が国王と王妃毒殺に、目を背けた
時も私はセシリーア女王のお傍にいました

目の前で苦しむ国王と王妃をただただ見ているセシリーア女王
私はこれでこの国が良くなると心の底で喜んでいました
セシリーア女王が苦しみ続ければこの国は良くなる
でもそうじゃない、セシリーア女王の能力はこの国に永遠の栄光を
与えるという事に気づいたのはもっとそれから後の話・・・、


「民は、愚かだった、セシリーア女王にすがり付いて
ばかりで本当に守らなくてはいけない姫すら守れなかった
だから、天罰が食らったのかもしれないですね
大戦は国民にとって、体も心も大きな傷をつけました
自分達の幸福は女王が作り上げていた物なのに・・・、」

「だからこの国の人たちがシュヴァリエ様を崇拝
するのも、そういうきっかけがあったからなんですか?」
「セシリーア女王は大罪人ですが、私達の恩人でもあるのです
愚かですね、本当に・・・、私達は・・・、セシリーア女王が絶望するのも
しょうがない話です・・・、」


絶望・・・?セシリアが?


「絶望って?」
「セシリーア女王はこの国にとても強い呪いをかけました
この国は栄光と繁栄の国ですが、それは過去の物
シュヴァリエ様の力によって押さえ込んでますがこの国は繁栄しない」


繁栄しない・・・?栄光と繁栄の国を愛したセシリアが何故呪いを・・・、
シュヴァリエ様の力をもってもこれ以上の繁栄はしない
それほどセシリアの力が強かったのか・・・、

シュヴァリエ様はとても強いお方だ、それは最初に会った時
痛いほど分かった、この国に太陽が見えないのは何故だろう
その疑問はセシリアの呪いが原因だとアイリンが教えてくれる
セシリアは太陽の力を借りて魔術を行うだから太陽が出ないと
言うのはセシリアが太陽を消してしまったという事だと


「古事記にも似たような話があった・・・、」
「まあ、そちらのお世界にも・・・?」
「うん・・・、でも、セシリアが本当に太陽を隠したと
決まったわけじゃないしね・・・、」



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