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教会の鐘が鳴る、慌てて起き上がるとベッドの上で
窓から日の光が差し込んでいた
目を擦って欠伸をし服を見ると白いレースのワンピース
に変わっており、いつの間に服が・・・、と首をかしげた

「おきましたか?」
「ア、アイリン・・・?」
「はい?何故私の名を・・・、」

目の前にいるアイリンは紅茶を淹れており、昨日会った
アイリンと見た目は変わらないが雰囲気がぜんぜん違う
どちらかというととても冷たい雰囲気があり
丸く優しさを感じだったアイリンとは正反対だった


「あれ、私・・・、」
「処刑場からセシリーア姫が連れてきて城についてから
気絶されたんです、体調は大丈夫ですか?」
「処刑場・・・?私が・・・?」

「あら、ショックで記憶が飛ばれているのかしら?」
「あ、さっきの続き・・・?」


慌ててアイリンに色々聞くとここは過去のイヴァラータだった
勿論国王はアルカヴァチノ王でシュヴァリエ様ではないし
セシリアでもない・・・、ここは、そうセシリアが戦争を起こす前の
イヴァラータなのだ・・・、


「私、またここに・・・!」
「気が乱れてますね、お茶をお飲みください」


アイリンさんが紅茶を差して来るのでそれを頂く
紅茶の香りまでも違うなんて・・・、まるでまた別の世界に飛ばされたみたい
篠も月子さんもいない・・・、この世界は私一人ぼっちなのだ・・・、


「私は、どうしたら・・・、」
「まずはセシリーア姫にご挨拶をお願いします、お着替えはこちらに」


白色の膝丈ぐらいのドレスが椅子にかけられており
それに着替え部屋から出る、何故だろうあんなに寒かった
イヴァラータが今はとても暖かい・・・、


「あの、今は春なんですか?」
「ええ、今は春です」
「春・・・、」


ふと中庭を見ると桃色の花で埋め尽くされていた
これは・・・、桜・・・?あの木々は全て桜の木だったのか・・・、
アイリンさんがこの木々はアフィリポア王国がセシリーア姫が
産まれたときに送った木々らしく名前を「サクラ」と言うと
丁寧に説明をしてくれた


「セシリーア様・・・、花恵様をお連れしました」
「ええ、入って頂戴」
「失礼いたします」


アイリンさんがドアを開けると私に頭を下げる
入れという事なのだろう、一歩部屋の中に入ると
アイリンさんは部屋に入らずドアが静かに閉じた


「おはよう、花恵、具合はどうかしら?」
「おはよう・・・、ございます・・・、大丈夫です」

「そうよかったわ」


セシリア・・・、セシリーア姫はにっこり微笑むとペンを止め
本を閉じると私にソファーへ座るよう言う
ソファーに座ると、桃色の魔法陣が机の上に広がり
ティーセットとクッキーが現れた
これがセシリーア姫の魔法・・・、初めてしっかりと見る
魔法陣を使った魔法に目を見開くと「あら、魔法は初めて?」と
セシリアがクスクス笑ってソファーへ座る


「貴方は私たちとは違う匂いがしたの」
「違う匂い・・・ですか?」
「ええ、殺してはいけないと思ったわ、お父様には叱られたけど
貴方を失えば何か大変な事になる気がして・・・、」


セシリーア姫は紅茶を一口飲むと「違う?」と首を傾げた
たしかにこの頃のセシリーア姫は私の存在を知らないかもしれない
このセシリアはセシリーア女王になってノスタージャ=アフィリポアと
同盟を組むそれよりも前のセシリアなのだ


「それは、どういう事なんですか?」
「私も分からないわ、でも本能が貴方を守ろうとしてるのよ」


それって不思議なことかしら?とセシリーア姫が笑う
満たされる優しさに目を細めて笑ってしまう
セシリアと過ごした日々が戻ってきたようで心地よかったのだ
たしかに毎日病院でセシリアとお茶した
辛い事や楽しい事沢山話した、全てくだらない話だったとしても
私にとっては掛け替えの無い時間で、セシリアは大切な人


「私ね、明日、両親が殺されるの」
「明日・・・?」

「そう、明日の三つの鐘がなる時、毒殺で、そして私が女王になる
そう牧師に予言されたのよ」


牧師といっても、隣のメルクリース国の王様よ?とっても偉い人
とセシリーア姫が悲しく微笑んだ


「今の私じゃ止められないんですって、でも逆に安心しているの
父はこの国をどう思っているのか分からないけどあまり良くない
方向へ進んでいる気がする、女神が嫌う欲望に塗れた国はいつか破滅へ」

「破滅・・・へ・・・・、」

「だから私が一からこの国を支えなおしてあげようと思うの、その為には
あの人は邪魔だから・・・、」


セシリーア姫の声は優しいのにどこかガランドウで寂しい
両親を見殺しにする気持ちは私には理解できないが
セシリーア自身は途轍もない罪悪感と自己嫌悪に押し込まれている
とても綺麗な心なのにどこか闇の香りが漂っている


「貴方は私を知ってるみたいだけど、貴方の知る私は幸せ?」

「セシリアは・・・、」


幸せだったのかな・・・?
きっとセシリアは月子さんの事が好きで幸せになろうとした
でもこの国の人のためにこの世界の人の為にそれを捨てて
自分を犠牲にしながら神に刃を向けた
私の傍にいた時もどこか寂しい瞳をしていたセシリアは・・・、
本当に幸せだったのかな・・・・、



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