ワールドイズマイン
遅い。遅い遅い遅い遅い。大体1週間ぶりに会うってのに、待ち合わせが午後ってのが気にくわない。そりゃぁ前日試合だったのも知ってるし(テレビでばっちり見たっつーの)1日オフなんて珍しいのも知ってるし(もちろん予定は把握済みだっつーの)それを私にくれたのも分かってる、けどさ!


「遅い」
「まだ時間前だろ」


なんなのその格好。コンビニに行くんじゃないんだからさ!遼と1日出かけられるって分かってから、この日のために美容院に行ってショッピングも行ったのに。テレビに映る時とか、雑誌のインタビューとかがある時は無駄にお洒落してくくせに。私のデートなんてどうだって良いって言うの?本当にむかつく。


「もう良いよ、早く行こ」


どうせそんなんだから、私のいつもより時間をかけた化粧だとかおろしたてのヒールだとか気付いてないんでしょ。私はこの日のために毎日頑張ってきたのに、彼にとってはいつもと変わらない、もしくはそれよりも退屈な日なのかもしれない。そんなの、悔しいじゃない。


「おいっ」


歩き出した直後に引っ張られた右手にかかった力は、強すぎて彼の腕の中に体がすっぽりと収まった。何すんのよ!と怒鳴りたかったのに、目の前を通り過ぎていった車のせいでその言葉は飲み込まれてしまった。


「ったく。危ねぇんだよ、お前は」


そのままぶっきらぼうに差し出された左手は、私だけの右手を納める特等席で。大好きで、私だけのもので。


分かってる、分かってるよ。私が格好付けてる遼なんていらないって言ったからだって。格好付けてる時間があるなら一秒でも早く会いたい。そう言った私は若かった。でも、そう思ったんだもん、仕方ないじゃん。


「…ばーか」


だからせめて、時間のある私が遼に相応しいような可愛い女になろうって思ったんだもん。それで、思って欲しいだけなんだもん。君に、かわいいって。そんなの、わがままじゃないもん。もう、早く気付いてよ!


大好き、なんて言わない
この先もずっと言ってやんない




110504 bgm♪ワールドイズマイン
素敵企画彼と歌を唄おう!様に提出させて頂きました。
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