アンバーがビオレッタの下に来てから、一週間が経過した。



「本日の夕方、旦那様が戻られますよ。」

「ホント!?」

エヴシェンの言葉に、ビオレッタは顔を輝かせる。

だが、その真意は決して父親を慕う感情から生まれたものではなかった。

━━パパから、アイツの事を聞き出してやるんだからな。






ビオレッタの父親のパラッツィはホテルに到着すると、愛娘の顔を見るよりも先ずエヴシェンに一つの指示を出した。

「ええと、ほら、何だったか。俺が連れて来たフィータスの兵士がいるだろう?薄茶の髪の。」

「クォーザイト・バルシュですね。」

「名前は分からんが、そいつを呼んでくれ。」

「かしこまりました。」

エヴシェンがアンバーを連れて再びパラッツィの部屋を訪れると、直ぐに下がる様に言う。

「お前はビオレッタの所に行ってろ。」

「かしこまりました。失礼します。」

彼が完全に去ったのを確認すると、パラッツィは厳重に施錠されたトランクから書類を取り出した。

「これが、例の物だ。」

「感謝致します。ドン・パラッツィ。」

アンバーは丁寧に御辞儀をする。

「お安いご用だ。おかげで俺は、君の様な騎士を格安で雇う事が出来たんだからな。」

そう、パラッツィは豪快に笑った。垂れた前髪の下でアンバーが眉を顰めているのも、知らずに。

「しかし一体、こんな情報どうするんだ?役に立つのか?」

「ええ。」

アンバーは受け取った書類を胸に、無表情で頷く。

「また新たな情報が入り次第、持って来よう。代わりにビオレッタを頼むぞ。娘(アレ)を失う訳にはいかないからな。」

「お任せ下さい。」

それを聞いたパラッツィは満足している様子で、宝石の付いた指輪だらけの手を膝の上で組んだ。

「君には期待しているよ。」

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