「大尉マクシム・オルディア、入室致します!大変遅くなり、誠に申し訳…、」

マクシムは謝罪の途中、言葉に詰まる。

「え、…っ?」

室内に居る人物に対して敬礼はしたものの、マクシムはヴィンスに説明を求めるべく狼狽しながら視線を移す。

それも、当然だ。

提督であるヴィンスの書斎に十字軍の隊員であるリュユージュが居る理由が、マクシムには理解が出来なかった。正確には、二人の会談の場に一介の尉官である自分が徴された理由が、である。

しかも、リュユージュは日頃マクシムも良く目にするクレリックシャツとネクタイの常装ではなく、正装の軍服を着用しているのだ。

部隊章や高級将官章に加えて勲章や褒章の数の多さも然る事ながら、その飾緒や肩章も非常に豪華なもので、マクシムは暫し目を奪われていた。



「おう、マクシムよォ。テメェ今、下にどんぐらい持ってんだ?」

彼は我に返り、ヴィンスの質問に答える。

「は!小隊が四と補助員で、約二百人です。」

「ん。そんなもんか。」

ヴィンスはリュユージュに視線を向ける。

「全然足りねェな。ま、どうにかすんよ。」

「有り難う御座います。」

ヴィンスは金箔の正十字が印刷されている一通の封筒を、マクシムに差し出した。

聖王フェンヴェルグからの正式な通達であるその証が、目に眩しい。

「聖上からのお達しだ。」

マクシムはその表情に緊張を滲ませながら開封すると、書類に視線を滑らせた。

「こ、これは…。」

「ちなみにそれ、一度頓挫した計画だからよ。粗方の準備は整ってんだ。」

驚愕の内容を目にした余り、マクシムはぽかんと口を開けて放心している。

「ぼけっとしてる暇なんかねェ。行くぞ。」

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