マクシムは呆れ顔で隣のリュユージュに視線を向けた。

「そんなんだから可愛くねえってんだよ!」

付き従う海兵達はマクシムの無礼な態度に気を揉むが、彼等にはリュユージュの表情から感情を読む事は叶わなかった。

「仕方ないだろ。何千何万の多勢を導く、それが僕に恵賜された役割なんだから。」

マクシムは先日の十字軍の軍営を訪れた際の隊員全員の最敬礼を思い出して、真実を語る彼を揶揄(カラカ)うのを止めた。

「ところで、五十の艦と千の乗組員が必要なんだって?十字軍では実際に何人くらい部下を持ってたんだよ、確か第二隊はそんなに人数いないよな?」

「うん、僕の直属の部下は二十五人程度。後は常駐の隊員が最低三千人はいたかな。」

「さ、さんぜんにん…?」

マクシムはそう、間抜けな声を出す。

「勿論、策戦によって召集する人数は増減するから正確に把握はしてないけどね。」

ふと、マクシムは沸いた疑問を口にする。

「なあ、そういや第二隊と第九隊以外って存在すんの?聞いた事ないんだが。」

「するよ。第三隊隊長の名は、バルヒェット・ズィーガー。しかし彼はもう一線は退いてるから、君が知らないのも当然かもね。この前、僕の上着を持って来てくれた斑白の髪の人だよ。」

ああ、と、納得した様に頷く。

「第四隊から第八隊の隊長も全員バルヒェットと同じく第一隊の隊員が兼任してたけど、今の彼等は復職した第一隊隊長に振り回されて大変だろうな。」

無意識に固唾を呑む、海兵達。第一隊隊長を双肩に担う人物の名は、余りにも有名だ。対して、マクシムは不思議そうに首を傾げる。

「知らない?ヒルデだよ。」

マクシムは表情を一変させ、無遠慮に警戒心を前面に押し出した。

「実際に会した君なら、簡単に想像つくでしょ。色々と。」

滅多にしない引き攣った諂笑を、マクシムはして見せた。



「とにかく、お前らがやりにくいってのなら別に無理する必要なくね?」

そう言いながら、マクシムは背後を振り返る。

「俺はアークライトの出身だから無宗教だし、どうしたって感じ方が違うんだよな。神使一族ってのは、お前らにとっては特別なんだろ?」

「仮に僕が一族の人間でなかったとしても、上官に対する君の態度は単純にどうかと思うけどね。」

部下達は、心の中でリュユージュに同意していた。

しかしマクシムはそんな部下の懸念を意にも介さず、リュユージュの背中をばしんと叩く。

「固え事言うなって!十も年下のお前に傅(カシヅ)かなきゃなんねえ俺の身にもなってくれよ。」

「僕は傅けなんて要求しない。部下として優秀な働きをしてくれさえすれば、それで良いんだ。それより、頻繁に背中を叩くのは止めろ。」

「おい、ちょっと待て。今はまだ、俺のが上官だよな…?」

リュユージュはその言葉を無視した。

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