それからと言うもの、翌日も、更にその翌日も、マクシムの元には連日レオンハルトからの手紙が届いた。
「汚い部屋。」
「るっせーな、掃除する暇がねえんだよ。」
ヴィンスはその余りの頻度に億劫になったのか、今ではヘルガヒルデの元に届ける事はせずリュユージュに取りに来させている。
「アイツ、元気でやってんだな。良かったよ。」
そう笑顔を見せるマクシムの横で、リュユージュは乱暴に封筒を破く。
「元気かどうかは知らないけど、生きてはいるみたいだね。」
その言葉に、マクシムは少しむっとした表情をする。
「何だよ、その言い草。アイツはな、いつだってお前の事を考えて━━、」
「黙れよ。」
リュユージュは威圧的な鋭い視線を向ける。
「そんな事は、僕が一番分かってる。」
しかし彼は直ぐにそれを逸らし、手元の手紙に戻した。
「僕が一番、レオンと一緒にいたんだから。他の誰よりもね。」
悲壮な感情を精一杯に吐き出す様な声色に、マクシムは黙った。
「つーかお前、封筒。」
「必要ないよ。それはレオンが書いたものじゃないから、要らない。捨てといて。」
「え?」
全く気が付かなかったマクシムは、手紙と封筒を並べる。
「あ、マジだ。」
よくよく見比べると、二つの字は似ても似つかなかった。
「こっちの方が全然綺麗だな。女の字みてえ。」
思い付きにも等しいマクシムの言葉に、リュユージュは俯いた。
「さすがにレオンと言えども、こんな短期間にたった一人でこれだけの情報を集めるのは不可能だよ。協力者がいるのだろうと、予想してはいるけれど。」
彼は何処か感情を抑えた口調で話す。
「消印からして最近は南から西へ移動しているみたいだし、一緒に行動しているんだろうね。」
「会話するだけでぎゃあぎゃあ叫ぶ奴が、女と何日間も?」
「恐らく。」
その返答に、マクシムは怪訝そうな顔をする。
「へえ。色々とヤバい目に合ったりもしてんだろうし、やっぱそういう仲なのかねえ。」
「そうだとしたら、何かしらの理由があるにせよ━━…、」
リュユージュはぐしゃりと封筒を握り潰す。その表情に変化は無いが、手はわなわなと怒りに震えていた。
「いい度胸だよ。」
━━え、ヤっベ。これ、地雷?
マクシムはたじろいだ。
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