潜在意識



「おはよう、ドラクール。」

ベネディクトが朝食を運んで来た。

「昨夜は良く眠れたかしら?」

もちろんこれは、彼の行動に対する皮肉だ。ドラクールが雨の夜に温和しくしている筈がない。



「どうかした?」

いくらドラクールが夜更かしした結果の朝寝を貪っているにしても、さすがにこれだけ声を掛けて身動き一つしなかった事は無い。

言葉は交わさずとも僅かに目を合わせる、というより、睨み付けたりは必ずするのだ。

不審に思ったベネディクトは、ベッドへと歩み寄った。その異変を知った彼女ははっと息を呑み、右手を伸ばして彼に触れた。






「いやだ、凄い熱!」

朦朧とした意識の中でドラクールは、昨夜の自身の行動を悔いていた。

━━二度も沼に入ったからだ。

彼に客観的に意見するならば、恐らく最初に水中に長居したからではなかろうか。






「起きられる?解熱剤よ、飲みなさい。」

歪んだ視界に、気味の悪い塊が映った。薬草だろう。

「…いらない。」

彼は力なく、首を横に振る。その頬は真っ赤に染まり、額には汗が滲んでいた。

「じゃあ聖王に謁見して、療治師を連れて来るわね。」

「止めろ。必要ない。」

乾いた唇から漏れる、幾分かは先程よりは強い調子の声。

「あら。貴方、その年で注射が恐いなんて言わないでよね。」

「ふざける…な…。誰が━━…、」

ドラクールの意識は、言葉の途中で絶えた。

-38-

[] | []

しおりを挟む


目次 表紙

W.A


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -