水なんて、蛇口を捻れば当たり前に出て来る物。

その程度の認識しかなく、ドラクールは回答に困った。

「行政が管理してますよね?水道局とか。」

リサは頷く。



「ですからその、行政がないんですよ。摩天城には。」



納得した様に、リサはもう一度首を大きく縦に振った。

制限もなければ庇護もない。一切が自己責任という、無法地帯での『法』。






「申し遅れました、俺はレイブン。一番隊を任されています。」

ドラクールはフードを取り、レイブンと握手を交わした。

「団長はずっとあなたの事を気にかけてました。必ず戻って来る、と。噂話で持ち切りだったんですよ。」

故に最初に声を掛けた少年がやけに怯えていたのだと、彼は知った。

「あなたは目立ち過ぎる、良くも悪くも。」

その一言にドラクールは苦笑するしかなかった。

「資質の差、でしょうね。」

そう言うとレイブンは残りの作業を片付けるべく、火災現場に戻って行った。






「ねえ、本当に王子様じゃないの?」

絶対に問われるだろうと、覚悟はしていた。

「違う。」

彼は虫酸が走る思いで強く否定した。

「だが、王家側の存在である事は否定出来ない。つまり俺は━━、」



リサに罵倒される事を覚悟し、真っ直ぐに彼女を見つめて言葉を続けた。

-88-

[] | []

しおりを挟む


目次 表紙

W.A


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -