城主は唇を震わせながら、どうにか言葉を紡ぐ。
「な…な…なんで…、こんな物を…?」
彼に限らず、リサやハクも同じ様に思っているに違いないだろう。
「ま、まさか…。」
ドラクールはそこで漸く口を開いた。
「いや、俺は王族ではない。かと言って、その聖布は偽物でもなければ盗品でもない。」
一同は理解に苦しんだ。
王族ではない。
偽物でもない。
盗品でもない。
「なぜだ…?なぜ…。一体何者だ?」
城主は力無くドラクールを見上げたが、彼はその問いに返答つもりは無く無言だった。
「王女はまだ十にもなっていない…。だとしたら…第一王子か?」
納得の行かない城主は頭を抱え、ぶつぶつと独り言を呟いている。
「だがしかし第二王子ならまだしも、第一王子を隠匿するはずがない…。」
リサも疑惑を露わにし、ドラクールと城主に交互視線を走らせている。彼女のこの行動が、非常に不愉快だった。
それは恐らく、自責の念があるからだろう。
「おい。」
威圧的な声で語り掛けながら一歩、城主に近付いた。
「交渉成立だな?」
「い、いや、待ってくれ。いくら政府や法律がないと言っても、キャンベル王家の人間がいたらバレンティナが黙っちゃ…。」
一層の不快感を募らせたドラクールは更に一歩近付いた。城主は畏怖し後退した。
「『地獄の沙汰も金次第』。そう言われて俺は来たんだぜ。」
彼は懐からそれを取り出し、城主の足元へと投げた。
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