「罪名は?」

「殺人。」

「相手は?処刑の執行時期はいつだ?」

「相手は良く分からない。女の人だって。父が処刑されたのは割と最近だよ。」






近頃女が殺された事件といえば、他にはない。






ドラクールが先見しようとしても出来なかった、つまり未来が既に断たれていた商売女。

そしてつい先日の見せ物にも等しかった、忌々しい断首刑。



━━なるほど。

ドラクールが納得したのは、リサがおかれている現状についてだ。



罪人の血縁者に対してそれが如何に幼かろうとも、周りは手助けなど出来る訳がない。

罪人を出した一族は、町や村を追われる規律なのだ。

住処は焼かれ、風体を晒され、いずれ野垂れ死ぬしか道は無く。

しかし裏を返せばそれが、この国の犯罪を減少させている事実に他ならない。






もし仮に手を貸した者がいたとしたら?

その場合、法の名の下の惨殺以外に何があるだろう。



━━平民ならば、な。

ドラクールは低く喉を鳴らし、不敵に笑んだ。

━━俺は、俺なら、殺されない。絶対。



彼には分かっていた。自身がフェンヴェルグにとって、どれほどの利用価値があるのかを。

一国の王者がどれだけ自身を欲しているか。

そしてそれは最高の権力をもってしても、決して手には入らないものだという事も。









「俺が助けてやる。」

ドラクールは漸く、リサの瞳を真っ直ぐに見る事が出来た。

「信じろ。」

彼女はほんの一瞬だけ顔を輝かせたが、それはすぐ躊躇と落胆へと変わった。

「ダメ。あたし達には関わっちゃダメだ。何されるか分かったもんじゃない。」

切なげに、苦しげに、胸を抱えて大きく頭を横に振る。

「大丈夫、俺は死にはしない。」

不確かな自信と、奇妙な高揚感。

二律背反的な感情の狭間で、ドラクールは自身の未来を描いてみたいと初めて願った。

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