━━言っている事が抽象的すぎて、いつも良く分からない。

ドラクールはやがて迎え来た眠気に逆らわず、ゆっくり意識を手放した。









「大層なご身分ね。怠惰で羨ましい限りだわ。」

ベネディクトは普段の皮肉ではなく、些か怒りを含んだ様な態度でドラクールを揺り起こした。

「いい加減に起きなさい。何て生活をする気なの?許されないわよ。」

その言葉の通り、夕陽の落ちた部屋は薄暗かった。

既に夜なのだと認識したドラクールは、何よりも先にテーブルを観察する。



其処には、ベネディクトが今し方運んで来たであろう夕食がある。



「昼飯は?」

「呆れた。貴方ずっと寝ていたのよ?」

「それは分かってる。だから昼飯は?」

「それだけ動かなくて、どれだけ食べる気なの?」

「違う!!」

ベッドから勢い良く出て、彼は真っ直ぐ詰め寄った。

「だから俺は寝ていて、昼飯は食わなかった。それはどうしたのかを聞いているんだよ!」

ドラクールの昼夜逆転の生活に腹を立てていたベネディクトだが、彼の突然の憤慨にそれは姿を消した。

「下げた…けれど。」

「下げたとは、捨てたという事か!?」

彼女は戸惑いながらもその問いに、頷いた。






「なあ、どうしてだ?」

俯いていたドラクールは顔を上げ、ベネディクトに食い付く様に詰問する。

「どうして俺は生かされている!?俺が必要だと!?何にだ、何故、どうしてなんだよ!?」

彼女の肩を激しく揺さぶり、怒鳴りつける。

「俺を生かすより、するべき事がある筈だろう!俺なんか…、俺なんかより…!」

力無く語尾は縮まり、同時に腕の力も弱まった。



『生きたがっている者がいる』



彼の想いは、声にはならなかった。






崩れ落ちるかの様に膝をついたドラクールの顔を、そっとベネディクトは覗き込んだ。

「違うわ、貴方は唯一無二の存在よ。それを否定しないで。」

ドラクールは俯いたまま無言で首を横に、強く振った。






寄り添いながら必死に生きる彼等を見ていると、ドラクールは自身を消し去ってしまいたい感情に駆られるのだ。

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