「つまりだね。君は暴行罪で起訴されたが、一度目の恩赦により君への死刑判決は無効となり、有期懲役へ変更された。そして二度目の恩赦で減刑が行われ、釈放に至った訳だよ。」

「一度目の恩赦は、いつ行われたのですか?」

ギルバートは驚倒した。

当人であるにも関わらず、彼は自分に下された死刑判決が無効になっていた事を知らされてさえいなかったのだ。

「ああ。これは、ヴェラクルース神使軍の凱旋による委任命令だね。一族の何方かが、上奏されたのではないかな?」

「そうなんですか。今回の恩赦は、慶事があったからですか?」

「恐らくはそうだろうけれど、それだけではなさそうだ。特定減刑だからな。」






最初にリュユージュが上奏した恩赦の種類を、大赦という。これは罪の種類を定めて行い、公訴を棄却するものである。



そして特定減刑とは、正式には特赦の中に特定減刑と一般減刑があり、これはその名称の通り、特定の者に対して行うものなのだ。

この特赦だが実は、有罪の判決を受けていない者に対しては効力を持たない。

つまり、もし仮に最初の時点でリュユージュが特赦を上奏していたならば、当時まだ裁判が行われていなかったギルバートに対しては何の効果も無いのだ。



故に、リュユージュは「賭けだ」と、言っていたのである。

しかし、自信はあった。

マクシムの様な一般人でさえ飛び級で卒業可能な士官学校を留年してしまう程度のリュユージュに、国法を逆手に取れる様な大層な知識は無い。



彼の背後には、非常に優秀な頭脳が居る。

その人物にギルバートの全てを預けた結果、自身の華燭を待たずとも良策を得る事が出来、結実したのだ。

意外なのは、リュユージュがその人物に深い信頼を寄せている事実である。

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