ヴェラクルースの双子達には、性別による差別は一切無い。男児に女性名を、女児に男性名を命名する慣習からもその片鱗が伺える。

女性の場合は妊娠から出産までの期間は行動に限度があるが、一年足らずの制約を理由に彼等が制限される事は無かった。

つまり、二人のどちらが聖職者になり聖騎士になるのかの判断材料に、性別はまず用いられない。

単純に職業に対しての適性診断により、彼等は将来を決定されるのだ。



しかし、一部に例外はある。ルード家の場合もそうだった。

アリュミーナは幼少期に眼球に怪我を負い、これが原因で彼女の視力は著しく低下してしまった。

よって、最低限の身体能力が要求される騎士にリュユージュが選出されたのだ。適性云々は全く関係のない、言わばただの消去法である。









この日から徐々に、彼の運命は狂い初めて行った。









だが、実際に自由意志の強いリュユージュが戒律を遵守しながらルーヴィンの元で問題なく聖職者として生活出来たかと問われれば、答えは恐らく否である。



現在の彼の思想や行動からは想像するのも難しいが、幼ない頃のリュユージュはそれはそれは消極的で温和しく、優劣を競ったり勝負を争ったりする事を極端に嫌った。

ルーヴィンはそんな幼子を慈愛に満ちた温かい眼差しで見守っていたが、ベネディクトにとってはその様な悠長な話しではなかった。

将来的にヴェラクルース神使軍の主軸となり、自分の主眼となるべきルード家の騎士が軟弱では困る、と、厳格且つ冷淡で容赦や妥協の無い教育が始まった。

リュユージュを心身共に強靱な騎士にするべく、育成の一環として大量の薬物投与がなされたのだ。

丁度、彼が就学時期を迎えた六歳頃の話しである。

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