「実は僕、ガイ・マーベリックの三人の子供達を探し出せと命令されて、デイ・ルイスの奴隷市場を襲撃したんだ。」

それを聞いたリサは顔面蒼白になり、恐怖に身を竦ませた。彼が勾引状を破棄していなければ自分がどうなっていたか、想像に容易い。

「商人に幼い兄弟を高値で売って、生き延びていると思ってたからね。」

「…!?」

リサの胸中はリュユージュに対する抗言で埋め尽くされたが、それを口に出す勇気は彼女は到底持ち合わせていなかった。

「でも市場を壊滅させても、君達の行方は掴めなかった。国内に留まっているだろうとは予想していたけれど、それがまさか摩天城とはね。全くの検討違いだった訳だ。」

リュユージュは足下に散り広がった紙片を踏み付けて躙ると、顔を上げてドラクールに視線を移した。

「完敗だ。約束は守るよ。」






ふと、部屋の隅に積まれている布がリュユージュの視界に入って来た。

「何これ。」

見覚えのある、その色彩と形状。彼は歩み寄ると手に取り、丁寧に広げた。

それは以前、ドラクールが城主に売り渡した聖布だった。

隣に置かれていた黄金の耳飾りにも気が付いたリュユージュはそれを摘まみ上げ、かざす様にして繁々と眺める。

そして暫くそのまま、動きを止めた。

「君の?」

その言葉にドラクールは些か戸惑ったが、しっかりと頷く。彼は平静を保ち続けるも、内心は何を言われるのかと気を揉んでいた。

しかしリュユージュは特に疑問を投げ掛ける事もなく、ドラクールに向かって聖布と耳飾りを放った。

「いや。これは…、」

そう言い掛けたドラクールに対して、リサが口を挟む。

「それ、『受け取れない』って言われて、あたしが預かってたんだよ。」

彼は対処に悩んだが、何れにせよもう摩天城には留まってはいられない。城主からの返却に応じる事にした。

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