翌日。

普段と同じ様に復興作業を進めていた囚人達は、一斉に集合を掛けられた。

「何だ?」

「さあ?」

囚人達は事情の説明もないまま整列させられ、暫くの待機を命じられた。






ギルバートが欠伸を噛み殺した、丁度その時。

「総員、敬礼!」

看守長が看守達に号令を掛ける。

暫くすると、砂塵を巻き上げながら一人の騎士が姿を現した。



葦毛の馬に乗った軍服の男は徐々に速度を落とすと、看守達と囚人達の前に来至った。

男は騎馬したまま、一通の令状を取り出す。

「ギルバート・S・イルザード!前へ!」

突然自分の名前を呼ばれたギルバートの心臓は、強く鼓動を打った。

まさか、自分が呼ばれるなどとは微塵も予想していなかった。ただ、連絡事項伝達の為の集会だと思っていたのだ。

━━な、何で俺が…?何にもしてねえぞ…!

緊張と恐怖により硬直した身体とは裏腹に、彼の動悸は激しさを増して行く。

「…?居ないのか?」

軍服の男がそう看守長に話し掛けると、彼は声を張り上げた。

「ギルバート・S・イルザード!!返事!!」

「は、はい!!」

ギルバートは戦慄く声でどうにか返事をした。

男が指示を出すと、看守長はそれに従って再び声を張り上げる。

「此方へ来い!!急げ!!」

彼は震える膝を必死に押さえ付け、囚人達の間を縫って前へ出る。突き刺さる多数の視線が、より一層その鼓動を強くした。



下馬していた男は、ギルバートに向かって令状と封筒を手渡した。

純白の封筒には黄金色の正十字が印刷されており、とても眩しかった。

「ギルバート・S・イルザード。本日を以て釈放だ。」






突然降り注がれた言葉に、ギルバートの思考は追い付いて行かなかった。

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