プエルト連邦だけに留まらず、世界を股に掛けて活動する傭兵組織『フィータス』。

紛争の援助から要人の護衛まで、金額次第で彼等が請け負わない仕事は皆無との風聞が立っている。

無頼漢共の集まりには間違いないが傭兵組織としては比較的統率が取られており、各国の裏社会と太い繋がりがあるとも囁かれていた。






アンバーはセブンに誘われるまま、彼と共に夕食を摂っていた。

「今、バレンティナから輸入されて来る兵器を待っている。その兵器の輸送が、俺達の今回の仕事だ。目的地は南へ約100Km。」

「地図を。」

セブンはフォークを口にくわえたまま、傍らに丸めてあった地図を広げる。

「と言うか、そもそもここはどこなんだ?」

自身の現在地を把握していないと言う突拍子もないアンバーのこの発言に通常ならば些かの不信感を覚えそうなものだが、セブンは違った。

この男には陸地の勘が一切なくても、何ら不思議ではない。彼はそう解釈していた。

「今はこの辺りだ。そこの山を越えりゃあ、すぐリブレ港が見える。」

セブンは地図と窓の外の山を、交互に指差した。

「水路を使えれば早いんだが、この運河には海軍がいるからな。何せまともな積荷じゃねえから、追っ掛けっこになると面倒なんだ。」

パクスキヴィタス大陸を縦断する巨大な運河は、プエルト連邦とキャンベル王国の国境も兼任しており、その管理はキャンベル王国が行っていた。

━━いや、確か運河は海軍の管轄じゃなくて海保のはずだが…。まあ、どちらにしても面倒なのは同じか。

暫し無言でいるアンバーの顔を、セブンは覗き込む様に見た。

「どうした?」

その声にアンバーは我に返る。

「ああ。いや、何でもない。」

「ところであんた、二刀流だよな?」

「そうだ。」

二刀流の場合、利き手と反対の腰に二本共を帯剣する者が多く、これを定形と呼んでも間違いではないと言える程に一般に広く浸透している。

しかし彼の形はそれとは異なり、左右に一本ずつ下げていた。

「独特だな、その形。」

「この方が疾いんだ。俺は両利きだから。」

「『双剣』は、あんたの代名詞だもんな。」



アンバーは身を固くした。

「俺を…知っているのか?」

「そりゃあな。メレディスのアンバーと言やあ、最強最悪の海賊だ。裏の世界じゃ知らないもんはいねえぜ。」

セブンは体を乗り出し、口角を上げた。

「色々と事情があったんだろうが、あんたは船を降りたって最強だろうよ。」

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