看守が監房を解錠する。
土木建築技師の資格の所有者との事で選出された彼は、目隠しをされたまま看守に両腕を捕まれて、ゆっくりと立ち上がった。
レオンハルトは重刑者の拘束具を入念に点検すると、看守から彼を受け取り、監房から連れ出そうと扉に向かって歩いた。
しかし開かれた扉の正面で、リュユージュが両足を踏み広げていた。
彼は進路を塞ぎ、行く手を遮っている様にも見える。
重刑者が抵抗した訳でも何でもない。
看守も所長も隊員も、そしてレオンハルトも、リュユージュの行動が理解出来なかった。
遠慮がちにレオンハルトが彼に声を掛ける。
「リュユージュ隊長?」
重刑者の肩が跳ねる様に、ぴくりと動いた。
「ああ、済まない。」
まるで意識を取り戻したかの様に、リュユージュは横に退いた。だが彼の視線は終始、重刑者を捉えて離さなかった。
「何か問題が?」
「ううん、大丈夫。」
何処か浮薄な態度のリュユージュを、レオンハルトは見逃さなかった。
所長が先導し、その後ろをリュユージュと共に重刑者とレオンハルトが続く。
そして第二隊に囲まれた他の受刑者が並び、最後尾には副所長と多数の看守が付いて歩いた。
屋外に出ると、砂丘独特の乾いた風が強く彼等に吹き付けた。リュユージュは軍帽を深く被り直し、それを避ける。
砂塵の向こうに、厚い鉄板に小さな監視用の窓が付けられただけの馬車が待機していた。
リュユージュは軍帽の下から重刑者を盗み見た。
彼は堅固に目隠しされている為、表情を覗う事は元より、素顔さえも見えない。
しかし、リュユージュにはこの重刑者の身元が分かっていた。
━━どうして君が…こんな所に?どうして…。
-166-
[←] | [→]
しおりを挟む
目次 表紙
W.A