ルーヴィンは大聖堂に戻り、暫し考え込んだ。
ドラクールの”予言”の真意を。
━━これから甚だしい惨劇が起きるとでも言うのか。
事実、現在バレンティナに襲撃されている。だがいかにせ、無勢だろう。
━━二百にも満たない兵では、陥落どころか宮殿まで辿り着く事さえ困難だろうに。
「…━━ン国師。ルーヴィン国師?」
ルーヴィンは呼ばれていた事に漸く気付き、後ろを振り向いた。
「ああ、アリュミーナ。どうした?」
彼は柔らかい表情を見せる。
「兄が戻ったと聞きました。今、どこに居りますでしょうか?」
「左腕を負傷している様だった。恐らく軍営で医師の処置を受けているだろうから、見舞って来るといい。」
「はい、ありがとうございます!」
彼女は深々と頭を下げ、大聖堂を後にした。
それを確認すると、ルーヴィンは更に奥へと歩を運んだ。
神権の象徴でもある日輪十字が掲げられた正面の壁に向かい、床に跪く。
神に祈りを捧げている訳ではない。
ルーヴィンは床板を退かし、施錠を外した。
朝日が射し込む中、姿を現したのは巨大な剣だった。
鞘に収められる事もなく剥き出しであるそれを暫く眺めた後、慎重に取り出した。
極めて長身である彼を以てしても、剣の方が未だ大きい。
両手でないと扱えない程の重量のあるそれを、左肩に乗せて支えた。
これが、ツヴァイ・ヘンダーの正しい構え方なのだ。
━━よもや、私が此れを使う様な事態にはなるまい。
ルーヴィンは自身の武器を再び床下に眠らせると、王宮へと向かった。
-139-
[←] | [→]
しおりを挟む
目次 表紙
W.A