「それにしても、此処の犯罪はすぐ解決するんだな?」
ドラクールは呆れた表情でルーヴィンに問う。
「犯罪心理学のエキスパートがいるからだろう。」
「それはさぞ優秀な人材を見つけたものだ。何故か殺人事件に限り、な。」
「何が…言いたい?」
ルーヴィンはより強くその黒髪を引いた。
「別に何も。」
彼の瞳にはいつも、喜怒哀楽など浮かびはしない。
あるとすれば肉体的な苦痛を体現する程度。
先頃の頭痛の様に。
自身が感じている痛みに対して不愉快に思うだけであり、他人に対して彼が喜怒哀楽を感じるなどは皆無。
━━別に何も感じちゃいないさ。
苦り切るルーヴィンが視界を占拠している筈だが、ドラクールの視点は相変わらず定まらない。
髪を掴む手を振り払おうとも、それ以前に制止しようともせず。ただひたすらに虚ろな彼。
「まあいい。余計な詮索はするな。」
ルーヴィンは込めた力を弛めた。その大きな骨張った掌から、はらはらと艶やかな黒髪が滑り落ちる。
「別にしていない。否でも社会情報は俺の耳にも入る。」
ドラクールは無造作にそれを掻き上げた。
「お前のその情報源は一体何だ?」
ルーヴィンもベネディクトも、そして恐らくは聖王も。
ドラクールが夜な夜な街を徘徊しているのは、黙認していた。
それにしても、彼が得た情報は早過ぎる。深過ぎる。
やはりこれが兼ね備えた本来の能力なのだろうか。
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