「さて。坊主の正体と目的を教えてもらおうか。」

店主はカウンターにリュユージュの剣を置き、その前に寄り掛かった。

容易く奪い取れない様にする為だ。

「グリップに布が巻いてあるでしょう?取ってみなよ。それが僕の正体だ。」

今し方置いたばかりのそれを、店主は再び手にする。そして慎重に結び目を解いた。

店主は暫く無言で生命十字の紋章を凝視した後、敵意を剥き出しにした表情をリュユージュに向けた。

「勘違いしないでよね。僕は別に、聖王の命令で動いてる訳じゃない。今回は私事だ。」

「私事だと!?王族に仕えるルード家が、奴隷を買いに来たとでも言う気か!?」

「人探しだよ。3歳の妹を売った11歳の姉を探してるんだ。二人の顔写真は僕の上着の内ポケットに入ってる。それと一緒に、令状もね。」

淡々と語るリュユージュを、猜疑の眼差しで見据える店主。

しかし彼は気にも留めず、話しを続けた。

「僕の目的は、『姉と取り引きした奴隷商人、或いは妹を買い入れた人物に接触する』事。つまり、僕の任務は飽くまでも姉妹の行方の追跡と拿捕であり、奴隷市場の在り方にまで首を突っ込む気なんか全くない。」

リュユージュは視線で自分の上着を指した。

「将軍の発行した令状を見てみなよ。僕には奴隷市場摘発の権利など、認められていないから。」

「分かった。でもちょっと待て、坊主。」

店主は後頭部に手を置き、下を向いて首を振っている。

「とにかく、お前はよ。」

上げられた店主の顔は、リュユージュの予想に反して呆れ果てていた。

「長話しするんならその前に、先ず服を着ろ!全裸で偉そうに仁王立ちしてんじゃねえよ。」

「何だよ、脱げって言ったり着ろって言ったり。僕はマスターの言う通りにしてるだけだ。」

「身体検査って言っただろ、いつまでも真っ裸でいる必要なんかねえ。」

店主は腹を抱えて笑った。

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