店主は注文の軽食を整えると、リュユージュの前に並べた。

「ギルのそれ、凄いね。」

「ん?レッド・アイって言うんだ。」

ビールを同量のトマトジュースで割ったカクテルだ。

それだけならば取り立てる程の事はないのだが、これはタンブラーの底に生卵が沈んでいる。

「赤と黄。兄ちゃんにピッタリだろ。」

煙草を吹かす店主は顎でしゃくって、それをギルバートに勧めた。






「じゃ、明日午後五時にな。坊主、遅刻するなよ。」

「しないよ。」

リュユージュは勘定を済ませると、ギルバートと共に店を後にした。



「気持ち悪…。」

ギルバートはここ数日、ろくに食事を摂ってない。そこにアルコールと生卵とは、相当な負担だろう。

「だからちゃんと食べなきゃって言ってるのに。」

宿に戻るなり彼は胃袋の中の物を全て吐き出し、そのまま意識を手放した。






翌日、待ち合わせの時間丁度に二人は酒場の扉を叩いた。

「おう。何か飲むか?」

店主は愛想良く、彼等を出迎えた。

「結構だ。」

ギルバートは即答する。

「僕もいいや。喉、渇いてないから。」

店主はグラスに手を伸ばしかけて、それを引っ込めた。

「それで、どうしたら良いの?」

「身体検査って言っただろ。裸になれ。」

リュユージュはおとなしく上着を脱ぎ、近くの椅子に放った。

「あ、兄ちゃんはいいよ。」

店主は手を広げてギルバートに示した。

「全部?」

「そう。全部だ。」

リュユージュは昨日買った安物の衣服の釦を外し、腕を抜く。

暁闇の時分とは違う、店内の電灯の下。改めて見ても溜息が出そうな程の隆々とした筋肉を、彼は惜し気もなく曝した。

店主も気が付いたらしく、それに注視していた。

ズボンのベルトを外すと、必然的に装着している剣帯も外れる。

「こっちへ。」

差し出された店主の手に、リュユージュはそれを預けた。

履き口の高い革靴を投げる様に置き、若干埃のかぶったズボンを脱ぎ捨て、下着も取る。

同性なのだからする必要もないのだろうが、何となくギルバートは視線を逸らした。

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