恩返し 



数日後。

いつもの様に瑠乃とふたりで買い物袋をぶら下げ、談笑しながら歩いていた。



「重そうだな。持ってやるよ、貸しな。」

背後からの声に振り返るあたし達。

「別に荷物、盗りゃしねーから。」

手を延ばすこの男の人、どっかで…?

「怪しいモンでもないんですけどね。」

思い出せず固まっているあたしに、誰?って口パクで聞く瑠乃。

「お礼だよ、ゴミの。」



「あッ、分かった!段ボールの人だ!!」

「へぇっ!?…段ボールの人、か。うん、そうだな。」

不精ヒゲを生やし、あの時と同じ様にジャージ姿。

一言で言っちゃえばダラしなさそうな人。



「いいから貸しなよ。どうせ近所だろ?」

あたし達からそれぞれ袋を取り、少し先を歩き始める。

「あ、あの、すみません。ありがとうございます。」

瑠乃はその人の背中にそうお礼を言う。

「いや。」

それだけ返事して、彼はあたしの自宅へと続く路地を曲がった。

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