恩返し
数日後。
いつもの様に瑠乃とふたりで買い物袋をぶら下げ、談笑しながら歩いていた。
「重そうだな。持ってやるよ、貸しな。」
背後からの声に振り返るあたし達。
「別に荷物、盗りゃしねーから。」
手を延ばすこの男の人、どっかで…?
「怪しいモンでもないんですけどね。」
思い出せず固まっているあたしに、誰?って口パクで聞く瑠乃。
「お礼だよ、ゴミの。」
「あッ、分かった!段ボールの人だ!!」
「へぇっ!?…段ボールの人、か。うん、そうだな。」
不精ヒゲを生やし、あの時と同じ様にジャージ姿。
一言で言っちゃえばダラしなさそうな人。
「いいから貸しなよ。どうせ近所だろ?」
あたし達からそれぞれ袋を取り、少し先を歩き始める。
「あ、あの、すみません。ありがとうございます。」
瑠乃はその人の背中にそうお礼を言う。
「いや。」
それだけ返事して、彼はあたしの自宅へと続く路地を曲がった。
-4- [←] | [→]
目次 表紙
W.A×