何がしたいの? 



あと数メートルで自宅への路地。

という所で、彼女の目的地が判明した。



あたしの家なんかじゃなかった。






それは彼の、家。






中からドアが開いて瑠乃が吸い込まれて行くのをあたしは見上げる形で、脳裏に焼き付けざるを得なかった。






「あ、もしもし。瑠乃?」

自分の行動の意図が、自分でも理解に悩む。

「遅くなってゴメンね!コレ、あたしの携帯だから。」

どうしてこんなに明るい声を出せるのか?

「でさ、今って何してるの?」

どうしてこんなに両手が震えているのか?

『今ね、甲賀さんトコで英語教えてもらってるよ。雪は?家?』

彼女には心の闇は存在しないのだろうか?

この手の平の汗で携帯を壊しそう。

『うん、そだね。雪、家にいるなら来ないかって。甲賀さんが。』

「え、いいよ。」

土壇場で、あたしはいつも弱気になる。

決着つける勇気なんかないクセに、ケンカをふっかけておきながら。

『あ、ちょっと待って。代わるね。』

「…えッ!?」

余計な事を考えていたあたしは、反応が遅れた。

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