ある夏の日(くそげー)*FIN*

リクエスト*くそげーの他の組み合わせ



ある夏の日。
うだるような夏の暑さにやられてルシファーの面々は倉庫でだらしなく駄弁っていた。
ところが昼も食べ終わって外が一番熱いであろう時間に、冬樹が過ごしやすいクーラーのある其処から立ち上がったから、ソファーで寝ている黒琥の隣りで読書をしていたNO2の春明の意識をひく。

「どこにいくんですか?」
「ちょっと狩りをしてくる」

その冬樹の言葉に春明は首を傾げる。

「抗争する相手の情報など入ってませんよ。」

ましてや黒琥は昼寝してしまっている。ヘッドである彼の了解なしにそんなことは出来ないと思っていたら、冬樹は気まずそうにして黙ってしまった。
また勝手に切り込もうと思ったのだろう、そう思って春明は「一人で行くなら僕も行きます」と言った。
幾分慌てたような冬樹は「いやいいから、本当にいいんだ俺一人で」とやけに挙動不審だ。

もうこれは確実だ。

「いいから連れて来なさい」
冷笑すれば、NO3の冬樹に逆らえる筈もない。

「…絶対に笑うなよ」
ただやけに念押しされたのだけは気がかりだったのだが。

*****

バイクで移動して辿り着いたのは東京ではあるが、鬱蒼と生い茂る雑木林だった。
えっ?と春明が思ったのも無理はない。
途中でコンビニで、スポドリと紐と割り箸とスルメを購入する。
それに訝しく思ったものの付いて来てみれば其処は林…どう見ても敵対相手が潜んでいる風ではない。

「此処でなにを?」

幾分戸惑って冬樹を見ると彼は照れたようにそっぽを向きながら答えた。

「だから狩りだよ。ザリガニ狩り」

そう言い切った泣く子も黙る不良はバイクの席の下から堂々とザリガニを入れる籠も取り出し掲げて見せた。

「はあぁっ!?」

油蝉が喧しく鳴いている雑木林の入り口で、つい春明は大きな声を上げてしまっていた。

*****

雑木林の奥は木陰がある分、日向よりは涼しいが、ただ其処にいるだけでジワッと汗が噴き出す。
今年の夏はいや暑い。

その暑さの中であっても冬樹は割り箸に紐を挟んで簡易的な釣り竿を素早く作ると、糸先にスルメを結びつけて雑木林の中にあった小川にそれを垂らした。
…やけに慣れているなぁと春明は思う。
おそらく彼がフラッと消える時、此処に来ていることもあるのだろう。

みーんみーんと蝉がかしましく鳴いて、春明はスポドリを飲んで、何とはなしに冬樹の垂らす糸を見ていた。だが数分も経たずにパチャッと直ぐにザリガニが連れた。
ザリガニはスルメを挟んで逃すまいとしている。
大きいし赤い立派なザリガニだ。ついつい男子としては血が騒ぐ春明である。

「ほんと簡単に釣れるんですね。」
「まぁザリガニは食欲旺盛だからな、スルメに喰いつきがいいんだ。」

ザリガニの胴体を掴んで、籠に入れながら冬樹は言った、それにしても冬の名を持ちながら、なんて夏っぽい男だと春明は思う。
そんなことをツラツラ考えていたら冬樹が春明を振り向いた。

「お前もやるか?」
「やります」

つい間髪なく頷くと冬樹はニィッと歯を見せて快活に笑った。
男ってこういう生き物なのだ仕方がない。

「釣り道具全部自分で作ってくれよ、割り箸も糸も餌もまだ在るから」

さっきは冬樹の手つきを見て、随分手早く釣り道具作るなと思ったものだが、自分もそれに負けず劣らず一生懸命に釣り道具を春明は作っていた。

糸にスルメを付ければ完成だ。
そして二人して年甲斐もなくザリガニを釣った。

最後には大小合わせて10匹以上釣ったが、きっと悲劇的に共食いしてしまうから春明と冬樹の二人が互いに釣った大きい二匹だけを残し後は放した。また元のように冬樹のバイクの座席の下にザリガニをしまう。

「熱くて死んじゃいません」獲ったザリガニを死なせたくない不良…春明。
「大丈夫、家にいるのピンピンしてるから」ザリガニの全てを知る不良…冬樹。

二人は途中でホームセンタに寄って、ザリガニの住環境を整えるとルシファーの溜まり場に戻り、ザリガニをそこに倉庫の片隅に置いた。ルシファー内部の不良たちは小学生よろしくザリガニに群がり、けっこう甲斐甲斐しく世話をしている。

これはそんな彼等の日常の、ある一日…

FIN




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