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ドンペリやルイ13世という高級なアルコールが次々と運ばれ、シャンパンタワーからは惜しみなく酒が溢れた。
食事は豪華で食べきれない程の量が運ばれる中…黒琥は金魚のように色鮮やかな女たちに囲まれ、柔らかな体でしな垂れかかられながら、酒を注がれ乞われるままに呑んで酩酊した。

だからそれが始まった時には対応できなかったのだ。

「そろそろ始めろ」

向かいでドンペリのピンクを煽っていた兄がそう命じると女たちはドレスを肌蹴て、黒琥と惣一の二人ともに群がった。

「っぅなにっ」

酔った頭で何が起こったのか考えようとしても分からない、ただ押し付けられる柔らかな体、異性の胸、香りが黒琥の欲情を煽った。
男とは全然違うが、群がれれば恐怖が湧く、それなのに向かいの兄は赤いドレスを纏った女と濃厚な口付けを交わして女がしなやかな手で兄の服を肌蹴させてゆくのを、そのまま受け入れていた。

「なんだよっこれっっ」

女が確かカナといった女が黒琥の膝に跨り、ギュッと黒琥の顔を自身の豊満な胸へ押し付けてくる。つい引きはがそうと動かした腕は彼女の柔らかな腰を掴んで…あまりの華奢な感覚に黒琥は引きはがせなくなった。

男と違う体、守らなきゃいけない女のやわい躰だ。

ピタッと動きを止めた黒琥に向かってカナは蠱惑的に微笑むとゆっくりと布ごしに黒琥のペニスを愛撫する。

「つっ」

「いいよ、私の中にいれて?一緒に気持ち良くなろうよ?」

ルージュをひいた色鮮やかな唇…が黒琥にゆっくりと近づいて触れた。
その瞬間、自分は目の前にいる『女』と同じで、こんな風に男を誘っていたのかという強迫観念が黒琥を襲った。

「ねぇ触って?」

『あっもっとっ』

女の強請る声が自分のと重なり頭がガンガンする。
急速に心が冷えて…けれど体は熱い。
今まで飲んだ酒のアルコールが頭をグチャグチャに掻き回してゆく。

「っ嫌だっ」

助けを求めるように向かいの兄を見れば、もう騎乗位で女を犯していた。
グチュッヌチュッと交わっている音と、女の甲高い嬌声。
それが…自分のと重なって黒琥は込み上げる吐き気を我慢できなかった。

「ぐぅっ」

思わず、自分に乗っていた女を押しやり、黒の大理石で敷き詰められた床に手をついてえづく。
込み上げてくるものを吐き出すようにゲホゲホッと噎せたが何も黒琥の中からは出ない。

「つっぅ」

イイ女がいるのに体が受け付けないことに気付いて、黒琥はそんな自分に絶望した。
男として終わってる。
息が止まりそうなぐらいショックで、黒琥は暫く項垂れていた。
…そして、どれくらい時間が経ったのだろうか。


「おい、吐きたいんなら吐いちまえ」


項垂れる黒琥を見下ろすように兄が佇んでいた。
先程の乱交など無かったように服を着込んで…いや僅かに首元が緩んではいるが、隙なく体裁を整えて兄は黒琥をジッと見ていた。
周囲にいた女たちは何時の間に下がらせたのだろう、一人もいない。

「…女は?」

「下がらせた」

そして兄は片膝をついて屈んで黒琥に視線を合わせるとスッと黒琥の頬を撫ぜて目じりに浮かんでいた涙を拭う。

「てめぇのソレは根深けぇな…いったいどんだけトラウマなってんだよ」

女を抱けば立ち直るかとも思ったんだがアテが外れたぜ、と続ける兄に今までの全てが兄の配慮だったのだと知った。

その上で自分の余りの情けなさに、黒琥は唇を噛みしめたのだった。
そんな黒琥に惣一は立ち上がるとフゥッと溜息を零す。
どこか思案にふけるような、その姿を振り仰ぐと視線がかち合った。


「男なら背筋伸ばせ。阿呆。」


そのまま鼻で嗤われると癪に触って…思わず黒琥は反骨精神で立ち上がる。
その姿に惣一が目を細めて微笑したのは気付かなかった。






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