『成実と政宗』act.1
成実の幼名を時宗丸という。
幼い政宗こと梵天丸と時宗丸。
二人は血の繋がった従兄弟として野を駆け、市井に触れ、奥州で過ごした・・・年も近かった為か二人は共に過ごせば過ごすほどに互いを理解した。
燃えるような夕焼けの中・・・
馬をゆったりと歩かせて・・・時宗丸が笑う。
「風が気持ちがいいなぁ」
「あぁ」
二人の間を秋色の風が頬を撫でてゆく・・・サヤサヤ鳴る稲の音が耳にも心地良い。
「いつか、」
だからだろうか時宗丸は何時になく素直に梵天丸に自分の気持ちを話そうと思った。
梵天丸の澄んだ隻眼がジッと時宗丸の言葉を待っている。
「梵が家督を継いだら、俺が家臣として盛り立ててやるからなっ」
すると梵天丸が「じゃあ俺が守ってやる」って言う。
互いに顔を見合わせて、どちらかともなく笑いあって・・・夕焼けに染まる笑顔に心も暖かくて・・・
他愛の無い幼い言葉は何時しか積み重なり・・・
そして大きな想いへと成長してゆく・・・
想いは積み重なってゆく・・・
守るべき奥州。
守るべき民。
守るべき主・・・
成実の中で大切なことは何時もぶれずに目の前にあった・・・
いつもぶれずに・・・
『成実!』
信頼して自分を呼ぶ主の為に・・・
『はいはい、梵、わかってるって』
成実は戦場を駆けるのだ・・・
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