海〜悲哀〜
海の匂いにまじり、血の匂いが辺りに満ちていた…
その中、整然と陸から離れてゆく船の中、ひときわ大きい船の甲板で一人の少女が数人の男達に叫んでいた。
「戻して!!お願い!!景時さんが、まだ陸にいるの!!」
涙で濡れた瞳。漆黒の髪を乱して少女は周りの男達に懇願する。
彼らは沈痛な面持ちで黙っていたが、しばらくして、茶髪の男が口を開く、
「…申し訳ありませんが、今から船を返すことは出来ません」
「なぜ!!」
「それは貴女にも、わかっているでしょう?味方に多大な被害を出すことは出来ませんからね」
彼女は静かに泣いた…その大きな瞳から次から次へと雫が溢れる…
『真貴ちゃん?』
私が辛い時、いつも側にいてくれた…
『大丈夫?』
どんなに辛くて哀しい時でも…笑ってて、優しくて…私にそれを分けてくれた…
『…好きだよ』
お願い!!今ここに来て!!私が壊れそうなの!!『大丈夫だよ』って言って抱きしめて…景時さん!!
失うことなんて考えなかった…考えられなかった…
だから時を越えよう…もう一度、貴方に会うために…
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