誰が来るかも分からない。
けれど目の前に本宮の存在に俺は箍が外れるのが分かった。

かけなしの理性を手繰り寄せて本宮の腕を取り、すぐの非常階段まで引っ張ってゆく。

「蛯原さんっ」

少し慌てたような声で俺を呼ぶ声。
それでも俺の足は止まることは無かった。

今朝、本宮を一目見た瞬間から分かってしまった。
妖艶ともいえる雰囲気を纏った本宮に、土日で旦那に抱かれたのだろうと。

そうだ本宮は結婚しているから当たり前の事なのに、彼女の纏う空気があまりに澄んでいたから、夫婦として旦那と体を繋げる事に意識が向かなかった。

それに思い立った瞬間に、体の熱が沸騰した。
嫉妬と怒りと、本宮への欲情と。

自分がこんなに独占欲が強い人間とは思わなかったのに。

俺は可笑しい。

バタンッと扉を開けて誰も居ない非常階段の踊り場までくると、俺は堪らずに本宮を抱き締めていた。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -