こんなのって無い。
なんでこうやって次から次へ色んなことが起こるの?

「今夜、僕の部屋においで」

耳元で囁かれる声。
本当は喜ばなきゃいけないのに。

夫として康一さんに求められる。
ギュッと抱き締められて、その強い腕の中で私は蛯原さんを思い出していた。

私が酔った時も、おぶさってくれた人のことを夫の腕の中で考えていた。

「もう、そろそろ子供をつくろう」

それなのに、康一さんはますます強く私を抱き締めて、「やめて」と少し身じろぎしても全然放してはくれなくて。

次の瞬間・・・

「キャアッ!」

康一さんに抱き上げられていた。

「やめてっ放してっ!!」

「放さないっ君は僕の妻だっ、今夜僕のものにするっ」

少し声を荒げて言う康一さんの声に体が震えそうになった、恐怖で。

康一さんの足が彼のベッドルームへ向かう。

いや、嫌なの。いやっ蛯原さんっ!

『主婦の片手間に仕事をするなっ』

『ソファで寝てたぞ』

『今、出れるか?』

『頼む』

『怪我してないか?』

『可愛いって言うな』

『真貴・・・』

『俺に、しておけ・・・』

涙が溢れて頬を濡らす、私は康一さんのベッドにそっと降ろされた。
すると康一さんが困ったように、視線をそらした。

「泣かないでくれ」

どうしたら良いか分からない。

続けられた言葉に私だって、どうしたら良いか分からないとボンヤリと思った。

ゆっくりと康一さんの丹精な顔が近付いて、チュウッとこめかみにキスをした。

その後も眦の涙を舐め取って、頬にキスして・・・ゆっくり優しい触れるだけのキスをする。

「もう離さない、誰にも渡さない・・・いいね」

そして強く強く夫の腕に抱きしめられた。

彼からは、もう香水の匂いはしない。
私と一緒のシャンプーの香りだけがしていた。

最初は柔らかなキス、そして深くなるそれを呆然と受けた。

「んっ」

声がゆるりと零れるのも仕方がない、そのまま康一さんは私の服をはぎ取ってゆく。
待ちに待った行為の筈なのに怖くて、心の中で何度も蛯原さんを呼ぶ。

けれど私は柔らかい手つきで胸を愛撫する夫の手を、下肢に伸びる愛撫を受け入れるしかなかった。

*****
康一さんが私を十分に慣らして、ぐちゅりっと水音をたてて中に入ってくる。
支配され、喘いでしまう熱い感覚。
「あっぁぁっぁ」
声を抑えられない、目の前には汗を滲ませた端正な夫の姿。

「君はっ僕だけに染まれっ」

その言葉に康一さんが私をどう思っているのか分からなくて切なくなった。
そしてグチュッと康一さんは腰を大きく引いた。
その何もかも持っていかれる強烈な感覚に声すら出ない。

「−−−−−−ッ」

そして再びグチュッと奥へ穿たれる。

「あぁっ」

甘い脳髄が痺れるような感覚と痛み。

「くっ」

康一さんの欲に濡れた声。
そのままグチュグチュッと犯され続けた。
どれくらい揺らぶられたのか次第に痛みでなくフワフワとした快楽が下半身から全身を包んでいく。

「やぁっんぅっあぁっぁっぁっ」

ぐちゅぬちゅ、くちゅっ

やがて肉のぶつかる音、水音それに煽られる様に、何が何だかわからない熱に頭が真っ白になった。
下肢から這い上がった快楽が私の全身を包んだのに康一さんは動きを止めてくれなくてイッたばかりの敏感な体に快楽が塗りこまれていく。

「あああぁぁぁっだめぇっんぅっあっもぅあぁぁぁっ」

康一さんの端正な顔がニィッと笑う、ひどい。
激しくなった動きに康一さんが私に快楽を刻もうとしているのが分かる。

「もっと僕をっ味わうんだっ」

「あっんっぅっああぁぁっ」

いやらしい水音がつながった場所から響いて、私もそうだけれど康一さんも切羽詰った顔になってきた時、耳元で康一さんが囁いた。

「出すぞっ」

それが何を意味するのか考えられない、何も言う前に、
イッた敏感な体の奥にドクドクッと康一さんの精液が注がれていく、

どぴゅどくどくっくちゅっ

「あぁぁぁ」

「くっうっ」

ゆるやかに最後の一滴まで康一さんが私に注いで…私は康一さんの色に染まった。
はぁはぁと互いの息づかいが部屋に満ちるなか私は康一さんの胸を押す。
「もう…」
けれど康一さんはその手をとって布団に縫い付けると、さっきの悪童のような笑みを浮かべた。

「まだ夜は長い、付き合って貰う」

という言葉と同時に康一さんは私に再び口付けてきた。
快楽に、堕とされる。




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