江戸編HAPPY END版☆二人続く未来

注*本編とは独立した話で江戸編のHAPPY版です。
鯉伴が真実に気付いて駆けつける辺りからです。




「すみやかに霊の中ツ国へと退かせたまへ、裁波・・・」

花開院の庭で・・・秀元の声で祝詞を唱えられるたびに・・・
常世の意識は遠のいた・・・だがそれを必死に気力で保つ・・・

流れ出した血が・・・どういう仕組みが描かれた陣の文字へと吸い込まれて・・・紅に染まってゆく・・・

と、其処へ・・・懐かしい妖気が物凄い速さで近付いてくるのがわかって、常世は顔を上げた・・・

「常世っっ!!!」

清水の方角から・・・ぬらりひょんが此方を目指しているのが分かって、常世はその漆黒の瞳を見開いた。
俺に止めを刺しに来たのだろう。
まだ大分距離がある・・・

大丈夫だ、鯉伴には手間を取らせねぇ・・・
常世は鯉伴に向けてわらった・・・

陰陽術に苦しみながら・・・龍の毒に抗いながらも・・・
その艶然な姿に鯉伴は息を飲む・・・
ずっと焦がれて焦がれた人が目の前にいた・・・

本当は知っていた、ずっと想っていた
嫌うなんて出来るわけが無い

その時、花開院の術は完成する、彼は五芳星を宙に切った。
だがそれを察知した鯉伴は刀を抜き放つと秀元に投げつけ、
ヒュンッと常人には考えられない距離を飛んだ、その刀は狙い違わず秀元の足元に突き刺さる。

「つっ!!」

気がそれる、その時間に鯉伴は空から・・・常世の横に舞い降りた・・・
途端に陣が鯉伴の妖力すら吸い取っているのが分かって・・・
常世は、その漆黒の瞳を開く。

「っ馬鹿野郎!!早く出ろ!!」

何故だ、何故・・・鯉伴が俺を助ける・・・先刻までは刃を交えて・・・引き裂いたのに・・・

するとニヤッと何もかも包み込むように微笑まれて。
抱き寄せられ、刀で支えていた今にも崩れ落ちそうな傷付いた体を支えられた・・・

前を見据える黒曜石の鋭い瞳が愛おしくて・・・お前の全部が愛おしくて・・・

泣きそうだ

どうして・・・こんなに、この腕の中が心地良いんだ・・・

「ぬらりひょん・・・でっしゃろな。」

そこで、急に現れ術を邪魔された秀元が声をかけてきた。
鯉伴は、ゆっくりと結界陣の上で視線を交わす。
花開院家最強の当主・・・かつて自分の父・ぬらりひょんと縁を持った奇特な人の子。

「そうだぜ・・・陰陽師・・・悪いがコイツは貰ってく」

その言葉のままに鯉伴はフワリッと常世を膝抱きに抱き上げた。
血だらけで、もう立っているのが不思議なくらいなのだ。
その決意に染まる金色の瞳を見て、秀元が笑った・・・昔に会った妖と姿が重なる。
こうと決めたら筋を通してしまう強さ。

「かまいやしまへん、鵺がこれからも京を統率できるんなら・・・僕に元々異論はないんですわ」

飄々と笑う、秀元。
彼の笑顔が、「結界陣を施せ」と文を送ったのは鵺だと言外に言う。

遠い約束・・・
鵺が妖を束ね、陰陽師が人を守り・・・両側から明確に線引きをする・・・
そしてそれが叶わなくなる時・・・鵺が役目を果たす・・・

虜に堕ちた自分は、もはや京を守れぬと察し、「贄」となり京を守ろうとしたのは、
他でもない鵺自身であると秀元は笑う・・・

だから連れて行って良いのだと・・・

飄々と枝垂れ桜の前で笑う。彼に向けて鯉伴もまた微笑んだ。

「恩に着るぜ・・・秀元」

艶やかな江戸の総大将がそう言って瞬間には、二人の姿は結界陣の中から消え失せていた。

はらりっと桜の花弁が舞っている。
その中で秀元は何故か酷く嬉しそうだった。

「なつかしい・・・人に逢いましたわ・・・」

なつかしい、「ぬらりひょん」の忘れ形見・・・
弱き者の為に一等強くなると言った「ぬらりひょん」の息子・・・この先、未来・・・

時は未来へと続いている・・・

そして秀元は口に柔らかい微笑を一つ乗せると袖を翻して、本家の邸宅へと戻っていった・・・



向かっているのは京の常世の邸・・・風のように速く、けれど真綿のように優しく運ばれている間、
常世と鯉伴は言葉を交わさ無かった・・・

ただ互いのぬくもりを感じていた・・・



そして半刻もしないうちに、鯉伴は邸へと到着し、フワリッと常世の自室の前の庭に降り立つ。
そしてそのまま、鯉伴は常世の室へと足を向ける・・・

けれど

「鯉伴・・・」

常世は何故助けたのか分からないままに鯉伴を呼んだ。

名を呼ぶ・・・清水寺では「虫唾が走る」と言われ、刃で切り裂かれた・・・
その恐怖で伺うようにしてる常世に・・・鯉伴は安心させるように、包み込むかのように微笑む、

額に口付けを一つ落として・・・囁いた・・・

「あぁ・・・何もかも俺は承知してんだ・・・もう大丈夫だ。」

暖かな腕の中で・・・抱き締められて、壊れ物のように口付けられ・・・

許されているのだと、全て・・・ぬろりひょんに・・・鯉伴・・・

それに息が詰まって常世は我知らず泣き出す・・・

「っなんだこれっ・・・ざけんな、てめぇ止めろ。」

その常世の姿に鯉伴は切なげに溜息を零した。
腕の中で静かに泣き出す常世に胸が詰まる・・・愛しいと俺の全てが叫ぶ。

あぁほら、こんなにも・・・お前を愛してる。

鯉伴が常世の涙をぬぐって眦に口付けた。

時よ止まれ・・・

この瞬間が堪らないほどに愛おしい・・・



部屋に入ると、其処には治療に必要な物が粗方そろっていた・・・
其処に鯉伴は壊れ物を扱うように、敷かれていた布団の上に常世を下ろす。

「っっ・・・・・」

それだけで痛みで顔を歪める常世に鯉伴の心が軋む。
俺が切り裂いた傷だ・・・全て・・・

右の肩から上段から切った傷が深い、治療のためと衣を脱がすと、露わになった肢体で未だ血が止まっていないのがわかった。

だが・・・妖には傷をすぐに治すために・・・有効な方法がある・・・

「おぃ、常世・・・俺の血を飲め・・・」

妖の血肉はそれだけで力の源となるのだ・・・

「つっ、御免こうむる」

けれど想い人は強情で、こんな答えなど予想できていた。

「馬鹿野郎・・・虜の毒に抗って・・・こんな深い傷じゃあテメェが辛いだろうが・・・」

あっさりと「虜」のことをばらすと、常世は「知ってるのか」とその漆黒の瞳を向けてくる。
虜の毒は現在も体を侵し、常世の頭を食い破ろうとしている・・・
鯉伴が頷いて、「承知してるって言っただろう」と答えれば、泣きそうに、その端正な顔を歪める常世。

次の瞬間、常世は自身の手で顔を覆った。

「俺を見るな・・・鯉伴。」

穢れた俺など見てくれるな・・・頼むから・・・

「見ないでくれ」

他の男に想いを告げ、悦んだ・・・あさましい俺を見るな・・・

最後は懇願するような響きになってしまう・・・と鯉伴のクスッと微笑む気配がした。

「常世は、綺麗だぜ・・・この俺が惚れるぐらいな・・・」

そっと顔を隠してた手を鯉伴が両手で外してくる・・・と間近で常世を覗き込む鯉伴の視線にかち合った。

「俺は心底、てめぇに惚れてんだよ」

馬鹿

と言われて、常世は何故か涙が溢れて止まらなかった。
その涙も鯉伴が口付けて吸い取ってしまう。

あぁ駄目だ、こいつの腕の中は暖かくて・・・安心して・・・俺を弱くする・・・
愛し過ぎて心が熱い・・・虜の毒の痛みが弱くなるほどに・・・

今だに毒は体を蝕んでいた・・・



まず傷を治すことからで・・・

「常世・・・盛大にくれてやるから飲めよ」

鯉伴はニヤッと笑うと小刀を手首にあて、躊躇なく引いた・・・

紅が飛び散る

それを身を起こした常世の口元に運ぶと飲み干す・・・舌でピチャッと響いた音がやけに淫靡で。
鯉伴は痛みの中の快楽にゾクリッと震える・・・

「んっ・・・」

吐息を零して・・・紅を優美な妖が舐め取っている・・・
唇を朱に染めて・・・漆黒の髪と白磁の肌に映える極彩色・・・

あぁ欲しい。

江戸の総大将の血を飲んで、みるみるうちに袈裟懸けの傷が塞がれてゆく・・・

「・・・もう充分だ、鯉伴」

そして常世がその唇を離したときには、その体に傷は無くなっていた。

「迷惑掛けた・・・この借りは・・・」

返す、と言いかけた時・・・急に鯉伴が二人の距離を詰めてきて常世はその漆黒の瞳を見開いた。

「おぃ常世・・・次は虜の毒を解くぞ」

てめぇが毒に侵されてんのは気分良くねぇんだよ、と言った鯉伴はニヤッと笑うと触れるだけの口づけを常世に落とした。



元々、治療の為に衣は引っ掛けていただけだったから、押し倒されると早かった。
鯉伴に貪るように口付けられる。

ずっと待っていた・・・

離れてた分を埋めるように、舌を絡めて、吐息すら貪って・・・

クチュッ、チュッ

「っんっ、ぅっ、はぁっ」

音が混ざり合って溶け合って頭が溶けて、常世が鯉伴の背に縋ると、
その瞬間、鯉伴の手が一番敏感なソコを愛撫した。

「あぁぁっっんっ」

意地悪に触れた瞬間に口付けを止めて、鯉伴は常世の喘ぎを堪能する、

つぶさに黒曜石の瞳で常世を見詰める。
自分と同じ虹彩の漆黒の瞳を流れる髪を・・・白磁の肌を・・・玲瓏な声も・・・

愛おし過ぎて・・・

「可愛い、やべぇ・・・愛おし過ぎて待てねぇ」

離れてた時間を埋めるように・・・いささか性急に鯉伴は自身の衣を脱いだ。
常世の入口に己をあてがう。

「愛してる」

耳元で囁かれる睦言・・・ずっと待っていた想い人・・・

グチュリッ

交わる水音
ゆっくりと溶け合う感覚・・・快楽が頭を染めてゆく感覚・・・
前からユックリと犯されて、常世は仰け反った。

「あぁ・・・んぅ・・・はぁっぁっ・・・あぁっ・・・」

待っていた、ずっと、ずっと・・・体が熱くて・・・
愛おしい・・・

だがそこで常世は身の内に巣くっていた、虜の毒の苦しみがスッと消えてゆくことに気付いた・・・

あれほど苦しかったのに快楽に艶美に喘ぎながら、僅かに訝しげな表情をする常世に鯉伴は笑う・・・

「どうだ?想い人に抱かれると毒は消えると、あの馬鹿蛟は言ってたぞ」

したり顔で艶然と笑う鯉伴が言った内容に驚きを持って見詰めると穏やかに微笑まれた。

それだけで胸が詰まる・・・愛されているのだと分かる。

「もう何処にも行くんじゃねぇぞ、常世・・・てめぇは俺のもんだからよ」

そう囁かれて、激しく突き上げられた。
ズクッと熱が身の奥を穿って、快楽が脳髄を突き抜ける

グチュッ、パンッ、ヌチュッ、グチュリッ

「ぁん!!つっ鯉伴!!」

余りの激しさに快楽で頭が真っ白になる。
鯉伴は喘ぐ常世の姿に、艶然と笑った。
そして犯しながら言う。

「俺に勝手に消えようとした仕置きだ!今日はたっぷり、その体に刻んでやるよ・・・てめぇは俺のもんだってなぁ。」

鯉伴は常世の奥をグリッグリッッとかき回し、舌で耳朶を舐めあげた。

「ふあぁぁぁっっ!」

二人の夜は重なり・・・そして何度も燃え上がった・・・
朝が明け・・・
同じ布団の中で・・・
鯉伴の腕の中で眠る常世の姿があった・・・

穏やかに・・・再び二人の時が重なる・・・
この先へと重なる・・・

そして江戸と京の二人は清水寺にて義兄弟の契り・・・杯を交わした・・・
桜舞う・・・江戸の時代・・・
闇を闊歩する百鬼夜行のお話・・・





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