Another Story 白亜と対峙

「ふざけてんじゃねぇ」

ザワリッと殺気が溢れた、それだけで恐怖と悪寒がするのを蛟は止められない。
圧倒的な力の差がある・・・けれど、引けない。引きたくない。
この人が欲しい。

「消毒するだけです、ぬらりひょんに抱かれた消毒を・・・」

「つっ!」

途端に動揺し、隙を作った常世との間合いを詰めると、
湯船に手をついて蛟は水に拘束され動けない常世の首に噛み付いた。
プツッと皮膚を裂き、竜族の牙に含まれる毒を流し込む。

「てめぇ!!」

それは妖には麻痺毒・・・そして媚薬にもなりえる。
神に通じる蛟が使える妖に有効な毒・・・

「抗い難いでしょう?私に身を委ねてください、常世様。」

そのまま蛟は拘束している常世に口付けを落とした。

だったが、蛟が出来たのはそこまでだった・・・
一瞬にしてブワッと湯殿を妖気が覆い尽くす・・・

一面の闇

それは幻などではない・・・常世が召喚したもので、その圧倒的な妖力に対する恐怖で蛟の体は動かなくなっていた。

「闇に堕ちろ」

たった一言それで決着がついた。
常世が創り出した闇の強烈な力・・・

音すら響かない、ただ集束する強大な妖力が一点に・・・それに蛟はなす術無く崩れ落ちたのである。

常世さま・・・
本当は私が常世様をどうこう出来るなんて思っていなかったけれど・・・
けれど、それを・・・ぬらりひょんだけが許されたことが哀しくて仕方が無いんです・・・

湯船から上がり、ザアァアアと零れ落ちる湯に頓着する事無く、常世は倒れ伏した蛟の側にかがんだ。
そしてワシャワシャと蛟の白銀の髪を撫でる。

「阿呆が、泣くぐらいならするんじゃねぇよ」

蛟は泣いていた
幼子のように

「つっ、だって、貴方がほしいんですっ」

それに常世は苦笑を零す。
蛟とは百年程の付き合いで、彼が自分に真剣に想いを寄せていることは知っていたから。
まぁいつかこんな日が来ることは予想してたし、蛟の竜族特有の痺れ毒は免疫を少しずつ付けてきていた。

「俺は物じゃねぇ、男磨いて来い」

可愛いとは想う。
自分を振り向かそうと一生懸命でいじらしい。

常世は艶然とわらった・・・
そして慰めに、見上げている蛟の唇に口付けを落としたのである・・・

その瞬間にスッと蛟の腕が動く、それを常世は止めなかった。
首へ絡まる、引き寄せられる、息すら食い尽くしそうなほどの激しさで舌が絡まる。

ピチュッ、クチュッ

「んっ、あぁ、、」

快楽が脳髄を甘く溶かしても、常世は蛟に応えた。
可哀想な俺の近従・・・

お前の想いには答えられない、だからこれぐらいは許してやる・・・

「常世っ、っ」

口付けの合間で泣きそうな声で呼ぶ蛟の声に常世の嗜虐心がそそられる。
こいつは俺しか見えていない。
それは酷く心地良いが、同時に味気ない。

ぬらりひょんは違う。
ぬらりひょんも俺もお互いが唯一になることは無い。
大切なものが在り過ぎる、守らなければならないものが多すぎる。

それが百鬼夜行の総大将ということだ・・・彼もそれを分かっている・・・そこに惹かれた。
気付けば目で追った、喧嘩をしていても楽しくて仕方が無かった・・・
俺のことを一番理解している・・・同じ立場だからこそ・・・想い合える・・・

そう想うと、急に興醒めして、常世はさっさと身を起こすと、
湯殿用に羽織っていた白の衣を軽く調えて出て行ったのである。

後には、溜息を深く付いた蛟が残された。





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