人外夢主に15の質問@

俺が京の邸の自室で煙管を吹かせていると、一陣の風が舞った・・・

「っ!」

普通の風じゃねぇ、見詰める視線の先で。
ふわりっと降り立つ優美な妖。

「わりぃな、常世。」

羽織を翻して、ぬらりひょんが立っていた。


★☆ぬら孫夢人外主人公に15の質問★☆

「で、何のようだてめぇは」

にやりっと悪童の様に笑う常世に、鯉伴は一瞬、困ったような微笑を零した。

「と言われてもな、これに答えてくれねぇか?」

そう言って彼が差し出したのは一枚の紙だ。

「てめぇが俺に頼みたぁ珍しいな。
良いぜ、よこせ。」

そして常世はその紙を受け取ったのである。

だが・・・

『01:単刀直入にお聞きします。貴方は何者ですか? 「○○の妖怪」などなるべく詳細をお願いします。』

一問目から常世は固まった。

「おい、ぬらりひょん」

「なんだ」

「てめぇ、俺のこと何も知らねぇのか?」

だがこれは鯉伴にとって心外だった。
勿論知っている。

「鵺だろう。」

「じゃあなんだこの問いは?」

ポンポンと煙管で紙の表面を叩いて、視線を投げる常世に鯉伴は『あぁ合点がいった』と答える。

「この質問は俺に対する答えじゃねぇよ、
俺の組の奴等に言う」

だがこれも常世には分からない。

「じゃあ、てめぇが勝手に話しとけ、俺は関係ねぇよ」

そして煙管を吹かす。
常世の気だるげで、けれど優美な姿に鯉伴は困ったように溜息を零した。

「てめぇを良く伝えるためにはよ、常世自身の口述調で記載した方が良いって雪女が言ったんだよ」

それに僅かに身じろぎして常世が反応を示す。

まぁ今回、鯉伴と義兄弟の契りを交わすことになったので、奴良組に良く思われたいという気持ちはあった。

ので・・・

「・・・仕方ねぇな答えてやる」

と常世は云って、フゥと煙管の煙を吐き出したのだった。



墨と紙を用意して。
部屋には二人の影があった。

『01:単刀直入にお聞きします。貴方は何者ですか? 「○○の妖怪」などなるべく詳細をお願いします。』

「じゃあ最初のから仕切り直しだ。
俺は鵺。まぁ力ある妖は深い闇と色んな想いとが混ざり合って生まれるんだが。

俺もそうだ。

闇から生まれる妖は・・・他の妖とは違う。
『始まりの妖』と云われてる、俺もな。』

これでいいか?と視線を投げるとそれを鯉伴が「ちょっと良いか?」と尋ねてくる。

「昔あったじゃねぇか、御所に忍び込んだ鵺は頭は猿、足手は虎、尾はくちなはのごとき異物。なく声の鵺に似たればとて、ぬえと名づけしならん。これは常世のことか?」

「あぁ、まぁ・・・色々あんだよ。」

だが常世は言葉を濁すと次に行けと鯉伴を促した。

『02:何処の組に所属していますか?
組に入っていない方は何か所属している妖怪の団体(一族など)があればその名前をお願いします。』


読み上げられた質問に常世はニヤッと笑う。

「お、これは簡単じゃねぇか。
俺は京の『虞』の代紋、鵺組の総大将だぜ。次!」

『03:組(或いはその他団体)では大将ですか? 下僕ですか?』

その質問が鯉伴によって伝えられると、常世は、フゥと煙管の煙を吐いた。

「てめぇ、ぬらりひょんわざと聞いてんのか?
だから大将だって云ってんじゃねぇか。次。」

『(以下は『大将』と答えた方のみお答え下さい)04・1:貴方の側近、或いはそれに相当するのは誰ですか?』

その質問に常世は一瞬苦虫を噛み潰したような顔をした。

「蛟・・・白亜か?アイツはまぁ困った奴だが俺の為には命なんか惜しむような奴じゃねぇな。
あとは天狗の黒影。鴉天狗とは違うぜ?
修験者が魔に堕ちた妖だ。

こいつ等がまぁ近従だ。」

その言葉に今度は鯉伴が反応を示した。
少し不機嫌そうに、

「おい、常世、もう隙を作るんじゃあねぇぞ」

そう言って、常世の頬をその大きな手でスルッと優しく撫でた。

「つっ、んな訳あるかよ」

それに常世は頬を染めて、煙管をふかせたのである。

『04・1:その他交友関係、敵対関係にある組や団体の名前をそれぞれどうぞ。』

これは言わずもがなだと常世と鯉伴は顔を見合わせる。

「京と抗争する組なんぞ、もう殆どねぇな。歯牙にかけてねぇ・・・・奴良組のぬらりひょん、鯉伴とは仲良いぜ。」

すると、ぬらりひょんが妖しく笑う。

「色んな意味でな」

筆を持ちながら、笑うその姿が優美でたまらない。
わかっていてやってる。

「阿呆」

常世は笑った。




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