京と江戸の百鬼夜行

古の都・・・京に潜む闇がある。
その名は鵺・・・平安の時代、内裏を襲った妖・・・

御所・清涼殿に、黒煙とともに不気味な鳴き声が響き渡り、二条天皇はこれに恐怖した。
遂に天皇は病身となり、薬や祈祷をもってしても効果はなかった。

鵺は深山にすめる化鳥なり。
源三位頼政、頭は猿、足手は虎、尾はくちなはのごとき異物を射おとせしに、なく声の鵺に似たればとて、ぬえと名づけしならん。

京に跳梁し、跋扈する。




そして今・・・この妖の戦乱の世で・・・百鬼夜行が動きはじめる・・・

「常世様。百鬼夜行の道行き、導いてくださいませ」

京の妖・蛟が主を呼ぶ。
短めの白銀の髪に瞳を持つ青年の本体は、蛇体に四肢を有し、頭に角と赤い髭、背には青い斑点、体側は錦のように輝き、腰から下はすべて逆鱗となって、尾の先に瘤がある。

神にも通じる水魔。
それが蛟。

「わかってらぁ」

そしてその強力な水魔を従わせる『彼』は、その漆黒の羽織を翻した。
彼の漆黒の髪に瞳・・・艶麗な姿には漂う色香がある・・・
艶然と彼は微笑んだ・・・

「いい夜じゃあねぇか」

ぬばたまの夜。丑三つ時。天満月が京の朱雀大路を行く百鬼夜行を照らす。
数百もの妖が妖気を撒き散らしながら都を跳梁する。
今夜は葉月戌日百鬼夜行日。

そして京の羅城門に一つの影があった。
それに気付いた百鬼夜行の主が歩を止める。

「よぉ、ぬらりひょん。俺の都だぜ?京はよぉ・・・」

その影は江戸の百鬼夜行の二代目総大将・ぬらりひょんだった。
彼は半分が人の血だが力は初代ぬらりひょんに引けを取らない。

鵺・常世と、ぬらりひょん二代目・鯉伴。
彼等はこの妖が跳梁する時代に出会った・・・互いを認める存在として・・・

「火事と喧嘩は江戸の華だろう?とっとと江戸へ引っ込みな。」

俺と京で喧嘩なんぞしてんじゃねぇ、と常世が悪童のように快活に笑う。
すると鯉伴も艶然と笑う。

「上洛などしねぇ。今夜は、てめぇを奴良組へ引き抜く為に来た。」

京の百鬼夜行の総大将を引き抜こうとする豪胆さに常世は笑った。
一度、全面抗争しても決着がつかず、互いが互いに相手を認めて争いから引いた・・・

だが時折こうして鯉伴は常世の元を訪れる・・・

「御免こうむるぜ、てめぇとは決着つけたくねぇしよ。」

それは互いに認めているから。下ではなく隣りに立ちうる存在だから。

「そういう所も嫌いじゃねぇ」

そう言って、羅城門の朱塗りの柱に寄り掛かったまま、ぬらりひょんが月明かりの下、艶然と笑う。
妖すら魅了する微笑。

とくんっと己の内が動く。
それを無視して常世は笑った、嬉しくて。

「上等だ。今夜こそどっちが上か教えてやらぁ」

「血の気が多いな」

そう言っても、ぬらりひょんは笑っている。いつもこの流れで飽きもせず喧嘩をしているから。

長い長い時の中で・・・何度も喧嘩した。
俺が動けば、ぬらりひょんが動く、ぬらりひょんが動けば俺も動く。

それが俺達・・・闇を闊歩する京都と江戸の百鬼夜行の主・・・

「てめぇら先に帰ってな・・・俺はぬらりひょんと話があるからよ・・・」

その常世の言葉に百鬼夜行は京の闇へと紛れて行った・・・・・




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -