魔神解放

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パキパキと何かが割れる甲高い音が響いた気がした。
同時に誰かの声が聞こえる。
ひどく柔らかい声のそれは耳に心地よかった。

「はじめまして、ロキ様。」



白銀の雪が舞っていた。
さらさらと酷く脆い切片が重く垂れこめた雲から降り積もる様に平原に落ちてくる。

その雪原に集められ無造作に置かれている神が封じられている解放石をながめ、彼女はしばしその神を解放するかどうか迷った。
何故なら、その解放石に閉じ込められている『神』は幾度となく争い、魔神として相対した『神』であったからだ。

死にかけたことも、ある。

北欧神話きってのトリックスター。気まぐれで嘘つき、周りを混乱に巻き込むことに喜びを感じる…魔神・ロキ。

それが『神』の名であった。

けれど彼女は雪原に置かれた石を見つめ、頷いた。
後ろで彼女の守護神であるジークフリートが心配げに見つめていることにも気づいていたが、決心は変わらなかった。

『世界中の神様が何者かによって 封印 されてしまいまして…。
神様達を解放するために 解放石 を集めてはもらえませんか。』

自分は約束をしたのだから…使命を果たさなければならない。
そして彼女は雪原の解放石に手をかざし、力を込めていった。

だんだんと光が辺りを照らしはじめる。

力が集まる。

炎を操る力を持つ神であるがゆえに周りの雪が溶けてゆくさまを解放者である彼女は見つめた。

そしてパキパキと何かが割れる甲高い音が響いた。



炎の髪、手にも炎を纏い、禍々しい仮面をかぶるその姿はとても聖なる神には見えない。

けれど彼女は『神』に向かって手を差し出した。

「はじめまして、ロキ様」

そんな言葉をかける解放者。
魔神としての己に相対したこともある人の子の言葉に、
ロキは思わず愉快になってしまった。

「キャハハハ!」

甲高い声で笑う。
耳障りだと障る音をワザと出しているのに、
目の前の彼女は凛とロキを見据え、眉を寄せることも視線を逸らそうともしなかった。

益々愉快になって、ロキは空中で彼女の間近に顔を寄せる。



「オレを解放するとは、もの好きなやつだな?どうなっても知らないぜ?」

なぜか彼女はそれに微笑む。

それが彼女と神とのはじまりとなるー・・・




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