終わりの始まりの物語

どうしても忘れられない光景がある。



どこまでも広がる蒼い、海のような蒼い空の下で。

大きな背を包んでいた白いコートが風に煽られてはためいていた。
そして目に鮮やかな橙のテンガロンハットも、その横で揺れる。

これを纏っていた人たちは、もうこの世には居ない。
世界中どこを探しても、存在しない。


大きな薙刀と刀剣が刺さっているのは墓石。
咲き乱れる花の中で眠る人達がいる。


エドワード・ニューゲート

ポートガス・D・エース

親父、息子と呼び合った『親子』が眠る場所・・・そしてその二人の家族、長兄をマルコという。



彼には、未だに目に焼きついて離れない光景がある。

ずっとずっと繰り返し彼の記憶に焼き付いたように何度も忘れられない光景。

それは愛しい親と弟の死に様だ。

残酷に過ぎ行く年月の中で、繰り返し打ち寄せる波のように、その記憶は彼を苛んだ。

だが運命は廻り。
不死鳥と呼ばれ白髭海賊団の一番隊隊長として名を馳せた彼は、敵の襲撃あい。

今まさに息を引き取ろうとしていた。

体から血が流れ出す、泣き叫んでいる「家族」の声が聞こえる。

「家族」を哀しませてしまうことだけがマルコの心残りだけれど。

重くなる体も、鈍る思考にもマルコは頓着しなかった。


戦の中で死ぬのは怖くないよい。

でも俺が死んで、親父とエースを知る者がまた減る。

一人減り、

二人減り、

それは切なくて堪らない。

でも、

けれど、

二人の志は受け継がれる。

人から人へ

その心に受け継がれる

永遠に

その螺旋こそ人の営み。

…それこそ不死鳥のような。


彼の薄れゆく視界に海のような蒼い空が一瞬だけ見えて。
彼の血に濡れた唇はそこで緩く弧を描いて、笑みが形作られた。

そして溜息のような吐息を最期に。
彼は穏やかに、ひそやかに息を止めた。


終わりは物語の新しい始まり・・・


不死鳥のように何度も再生し、巡り巡る運命の話・・・





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -