◎勝手に宣言 心結side


まさ達と遊ぶ日が明後日に迫っている今日の日。私は今、先にドリンクを作り始めているであろう小春の元へ急いでいる。


「おまたせ!」
「はーい、あとそっちのタンク作ったら終わりだよー」
「さすが小春、仕事が早いねー」
「そんなことないよう。…あ、そういえば」
「うん?」

「赤也くん、明後日は長太郎の家に泊まるんだって」
「あ、まさもジローんちに泊まるって言ってた!」
「え、ジロー?」


小春は驚いたようで目を丸くして私を見る。そして私も、初めてそう聞いた時は同じ顔をしていただろう。
私は、昨日まさから来たメールの内容を説明することにした。


「なんかね、その日ジローの家に丸井くんがお泊りするんだって。それでまさが1人で帰るって言ったら、丸井くんがジローに聞いてみてくれたらしくて」
「なるほどね。……それにしても、ジローと仁王くんか」


複雑そうに眉をひそめる小春。どうしたんだろう?そう思いながら話しを続ける。


「それで、流石に急だしジローの家に迷惑かけたくないからってご飯一緒に食べることになったんだけど…」
「そっか、それもそうだよね。赤也くんは…長太郎の家だし、どうなんだろう」
「ま、後で聞いてみて、食べないなら食べないで2人は先に帰っていいよ」
「え、本当?」

「うん、大丈夫!…でも、何時くらいまで遊ぶのかなぁ」
「それにもよるよね。場所聞いた?」
「聞いたー!動物園ー!」
「ふふ、私もすごく久しぶりだから楽しみ!」


話しながらしっかりと手を動かしていた小春が、タンクの蓋をキュッと閉める。タンクを持つのは重いから1年生の子に頼むんだけど、周りにはいないからとりあえずタオルを持ってテニスコートに向かうことになった。コートの途中で誰かいるだろうし。

タオルの入った籠を持って小春とテニスコートに向かって歩いていると、向こうから誰か歩いて来る人が見えた。


「あ、亜子ちゃん!」


小春の声に亜子さんも反応して、お互い吸い寄せられるように距離を縮める。亜子さんの隣りにいるのはどうやら新聞部のようで、部活動新聞のために写真を撮られた去年のことを思い出した。
…もう1年。早かったなぁ。先輩達は元気だろうか。そんなことを考えて歩いていると、いつの間にか小春に追いついていた。


「今日はテニス部の取材?」
「ううん、今日は弓道部だよ。テニス部は強豪だから、今年は全国大会に重点を置いて取材するみたい」
「なるほど…」


小春は私の足音でも聞こえたのか、不意にこちらを振り向いた。亜子さんも小春に釣られて私と目が合う。


「あ、亜子ちゃん!こちらは知ってるかもしれないけど、一緒にマネージャーやってる心結で…心結も、もちろん知ってると思うけど、亜子ちゃんだよ!」
「もちろん知ってます!…確かに、近くで見た方が絶対に可愛いね!」
「え?」

「あの、ご、ごめんね。亜子ちゃんの事この前初めてちゃんと見たら、遠くで見てたのよりもずっと可愛くて…心結にもそうやって話しちゃったの」
「そ、そんなことないのに…」
「いえ、あります!私は可愛くない人に可愛いなんて言いません!」


可愛くない人に1回言うより、可愛い人に2回言います!亜子さんは可愛いです!
亜子さんの可愛い顔を見ながら、私はそう宣言した。すると亜子さんと小春は2人顔を合わせて…。


「ぷっ」
「ふふっ」


あはは!と声を出して笑い始めた。もはや小春なんて、目が涙目だ。どうしたんだろう、一体。


「はー。さすが心結だね、ほとんど初対面の人にそこまで言ってのけるなんて」
「私も面と向かってこんな風に言われたのは初めて。日野原さんって面白いんだね」
「えっ、面白いとこあった?」
「意識してないんだもん、本当にさすがだよ」
「可愛い人に可愛いって言って何が悪い!」

「ふー、可笑しかった。ありがとう、日野原さん」
「あ、いえ。こちらこそ間近で見れて目が癒されました」


「もー、今日の心結面白すぎ!」、小春はそう言ってまた笑い始めてしまった。確かに、小春を毎日見てるだけでも私の目は癒されてるよ?でも、亜子さんは亜子さんでまた違った魅力がね。


「日野原さん、小春ちゃんもそうだったけど、敬語じゃなくてもいいよ?」
「あ、うん!それじゃあ…亜子ちゃんも、心結って呼んでください!じゃなくて、ね!」
「ふふ、ありがとう」
「それじゃあ、部活始まりそうだから私達そろそろ行くね」
「あ、引き止めちゃってごめんね。部活頑張ってね!」

「ありがとう!」
「はーい!」


部活前に癒されましたー!るんるん!



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