◎朝のお仕事 心結side


「まだ6時半?」


驚いて思わず声に出てしまった。横を見れば、少し眉間にシワを寄せて小春は寝返りをうった。


「……」


昨日、ご飯を食べて8時ころに布団に寝そべったところから記憶が無い。…ということは。


「10時間睡眠…?」


え、ありえない!そうまた叫ぼうとして、次はちゃんと止めた。危ない危ない!…でも困ったなぁ。完璧に目が覚めちゃった。隣りで眠る小春はまだまだ起きそうに無くて。
どうしようかとぐるぐる考えているうちに、ふと昨日のトイレの前でのことを思い出した。





「あ、宍戸!お疲れ様」
「おー、心結もお疲れ」

「そういえばさ、夜とかちゃんと眠れてる?」
「ああ、眠れてるぜ。心結は寝れてねーの?」
「ううん、ばっちり7時半起き!」
「だよな。お前に限ってそれはねーか」
「そういうこと。宍戸は何時に起きたの?」
「俺は…6時だ「仁王先輩!」





「もしかしたら、宍戸起きてるのかも…」


微かな希望の光が見えて、私はちょっと嬉しくなった。そうと決まれば、電話してみよっと!
プルプルとコール音が聞こえる。幾らか鳴ってから、突然止んだ。


『心結?』
「あ、宍戸おはよう!今何してる?」
『え、は?今何してるって…』


いきなりの質問に、困ったような声の宍戸。


「あのね、私今早く起きちゃって暇だから、宍戸昨日早く起きてたって言ってたよね?だから宍戸も起きてるかなと思って電話したの」


そこまで私が言うと、「あー…」と閉まらない返事が返ってきた。


『俺、今忍足とランニングしてんだよ』
「んえっ?」
『昨日から、朝忍足とランニングしててよ。だから6時に起きてたってわけ』


心結の声めっちゃマヌケやなー。宍戸の後ろから、忍足のケラケラ笑う声が聞こえてくる。


「…それ、まだやってる?」
『あと10分くらいで終わるけど…』
「じゃあ私、玄関で2人のこと待ってる!」
『あと10分だぜ?』
「大丈夫ー!じゃ、また後でね!」


電話を耳から離しながらなんか宍戸の声が聞こえた気がしたけど、気にしないで電話を切る。とりあえず着替えて顔を洗おう!





「よし、完璧!後はドリンク買うためのお金持って…」


財布を持って部屋を出る。エレベーターから降りてすぐの自動販売機でドリンクを2本買ってそのまま玄関に向かった。


「あ!」
「お、ほんまに来たんやな」
「あったり前!てか、なんか待たせちゃった…?」
「いや、俺達も今来たとこ」
「おん」
「本当に?それなら良かった…。あ、これ差し入れね!」


先ほど買ったドリンクを2人に渡す。買ったばっかだし、まだキンキンに冷えてるはず!でも、2人とも汗をかいたようでシャツの袖で汗を拭いていて。タオルも持ってくれば良かったかなぁ…。


「もろてええん?金、心結のやろ?」
「いーのいーの、朝早くから頑張ってるんだからこれくらいさせて?」
「いや、わりーよ。後で金返すから」
「えっ、いらないいらない!私が勝手にきたんだもん、本当に気にしないで!」


そう言って親指をぐっと上に向けると、忍足は「敵わんなぁ」と困ったように笑った。


「なら、そろそろ戻るか」
「そうだな。心結はどーすんだ?」
「んー、少しその辺歩いてみる」

「わかった。…これ、おおきにな」
「ごちそうさん」


エレベーターに向かって歩いていく2人を見送り、私は外に向かった。外には既に太陽が上がっていて、綺麗な晴天が広がっている。今日も、暑くなりそうだなぁ。



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