桜がキレーに咲く季節になったけど、オレの心は全然明るくない。
だって泰河(たいが)とクラスが違っちゃったしぃ?
みんなオレのこと怖がっちゃうし、女の子はぶっちゃけうるさ過ぎてウザイしぃ。
もうサイアク!チョーつまんない!!
机にベッタリ伏せても眠くなんないから余計にオレってばイライラしちゃう。
カタンって小さな音がして、顔を動かしたら女の子が隣りに座ってたの。
それが今まで遊んできた子と違ってすっごくちっちゃくて、細くて、白くて、ちょこんとしてるんだよねぇ。
なぁーんか気になって見てたらバッチリ目が合っちゃったぁ。
「あはー、はじめましてぇ。オレ都賀野銀二(つがやぎんじ)っていうの。キミの名前はぁ〜?」
机に頬杖をついたまま自己紹介してあげたら、長い前髪の奥でおっきな目をパチクリさせてんのぉ。
ニコニコして待っててあげるとすこぉーし俯いて名前を教えてくれたけどねぇ。
「ぁ、遠野千鶴(とおのちづる)…です、」
「そっかぁ。ねぇ、ちづちゃんって呼んでイイ〜?」
「ぁ、は、はい…。」
「オレのことはぁ銀二って呼んでネ。」
ちづちゃんって呼んだらコクンって頷いてくれた。
オレのこと怖がってるとかじゃなくて、なんかぁ人見知りしてる感じ。
ニコって笑ったらおっきい目を細めてちょっとだけ笑ってくれたぁ。
けど教室のどっかで煩いヤツが大声で笑ったら、ちっちゃなちづちゃんの肩がビクってなって、でもすぐに周りを見渡してホッとしてぇ。
少し涙目になっちゃってるトコとか、小動物みたいでまじカワイイ〜!
新しいセンセのくっだらない話を聞いてるよりちづちゃん見てる方が面白いやぁ。
背中くらいまである黒髪とか全然染めてないっぽいし、真面目にセンセの話聞いてるし、きっとフツーの子なんだよねぇ。
でも配られたプリントにラクガキしちゃってるから優等生ってわけじゃないみたぁい。
「何かいてるのぉ?」
ちょっとだけ覗き込んだら犬が描いてあってソレが上手くてビックリしちゃったぁ。
いきなり声かけちゃったから、ちづちゃんも少しビックリしちゃったみたい。
…ごめんねぇ?
「わー、上手ー。ちづちゃん絵心あるねぇ。」
「そんなこと、ないです…その、描くのが好きな…だけだから。」
照れて俯いちゃったちづちゃん、耳まで真っ赤ぁ。
目のトコロ手で擦っちゃったりして‘にゃーん’のポーズするの。
なにこのカワイイ生き物ー!
ウサギとかハムスターとか描いてーって言ったらホントに描いてくれたしぃ。ちづちゃん優しいねぇ。絵もとっても上手くてオレのプリントと交換してもらっちった。
今日は入学式だけだったからもう解散。
あーぁ、もう終わりなのぉ?
もっとちづちゃんとお話したかったのにぃ。
でもまぁイイやぁ、今日はもうバイバイしてあげないとねぇ。
また明日ぁ〜って手を振ったら、ちづちゃんわざわざ振り返してくれたの。
なんにも言わなかったケドぉ、ちょっとだけ笑ってちっちゃな手をひらひら〜ってぇ。
ホントはガッコーなんて嫌いだけど、ちづちゃんとまたお話したいし、明日も来ないきゃねぇ。
泰河のいる教室に向かいながらオレってばガラにもなくプリント片手に鼻唄なんて歌ちゃったぁ。Novel top Next