〜♪〜〜♪
「ん〜?なんだよぉ…。」
聞こえて来たお気に入りの音楽で目が覚めちゃったぁ。
見たら泰河からの電話。この時間はまだオレ寝てるっていつも言ってるのにぃ。
「もしもしぃ?」
【…やっぱまだ寝てたか。】
電話に出たら向こう側で溜め息ついてるっぽい泰河の声がすんの。
なになにぃ、そんな呆れた声出さなくたってイイじゃーん?
なんかあったっけぇ?って聞いたらちょーっと怒った声で【今日は族潰すって言っただろ、昨日。】って言われたぁ。
そうだったけぇ、全然覚えてないやぁ。
あははーって笑うオレに携帯の向こうで泰河がすっげぇ怒ってんのが分かる。
でもごめんねー。
「ムリだしぃ、オレ今日ガッコー行くもーん。」
【………は?】
あははは、泰河の間抜けた声おっかしー!
チョー怒ってたクセのにぃ、なんか力抜けちゃったぁって感じ。
メンドイから「ばいばぁーい」って言うと携帯の向こうで泰河が何か言ってたケド、聞こえないフリして切っちゃった。
きっと今頃めちゃくちゃ怒ってるよねぇ。
今日潰されちゃう族かっわいそー!
泰河のストレス発散に使われちゃうコト間違いナシ!!
まぁオレには関係ないしー?
時計見たら10時なんだもん。早く行かないとちづちゃんと会う時間減っちゃうしぃ。
シャワー浴びて、服着替えて、んーご飯はイイやぁ…髪もセットし終えて、カバンとかいらないからぁオッケーかなぁ。
バイクの鍵と携帯と財布があればイイよねぇ。
全部30分くらいで終わらせたオレってすごくなぁい?
マンションの前に停めてあるバイクに乗ってっちゃえばガッコーまで10分もかからないもん。
チョーシよくかかったエンジンちゃんマジさいこー!
ガッコー行くのこんな楽しみなのって初めてじゃねー?
思いっきりバイク吹かして走り出せば風も気持ちいいしぃ。
待っててねぇ、ちづちゃん。
「このxはyに代入して――…」
先生が説明をしながら黒板に書いて行く数式を、わたしもノートに書き写す。
みんな真剣だからか教室にはシャーペンの音が静かに響いていた。
隣りの窓際の席は、まだ、誰も座っていない。
昨日会ったけど今日はまだ登校していない銀二くんの席。
男の子と喋ったことなんてほとんどなかったから、すごく緊張しちゃって、どもっちゃったのに銀二くんは嫌な顔をしなかった。
見た目が不良さんっぽくて、でもニコニコ笑顔で話してくれて。
絵も褒めてくれて…また明日って挨拶もしてくれて。
たくさんの初めてをもらってすごく嬉しかった。
だけど、まだ来ないってことは今日はお休みしちゃうのかな…。
…せっかくお話できたのに、寂しいな…。
カリカリ数式を書いてたら急に教室の扉が開いて、明るい声が響き渡った。
「おっはぁ、みんな元気ー?オレちょー元気ぃ。」
ちょっと間延びした独特な口調の男の子は昨日お話した銀二くんだった。
来てくれたんだなぁって少し嬉しくなる。
カバンも持ってないけど、席に座った銀二くんはニコって笑ってわたしに顔を向ける。
「おはよぉ、ちづちゃん。」
「お、おはよう銀二くん。」
慣れなくてやっぱりどもっちゃうなんて恥かしい。
だけど銀二くんは一度目を瞬かせてから、すごく楽しそうにうんって返事をしてくれた。
…お友達になれたらいいなぁ。
すぐに寝ちゃった銀二くんを一度見て、わたしは授業に集中することにしたの。
隣りに誰かがいるってすごくあったかいね。Prev Novel top Next