扉の閉まる音にリビングにいた全員が目を開けた。
タイトが床から起き上がり、そっと廊下へ視線を向けた。
そうして誰もいない事を確認すると残りの三人もそれぞれ起き上がる。
まだダイニングからは鍋の良い香りが漂っており先程までの楽しさの余韻を残していた。
「何であの二人はくっつかないんだか。」
呆れ気味なアレイストの言葉にガーフィルが豪快に頭を掻く。
「馬ぁー鹿、あの隊長だぞ?」
「……朴念仁。」
「そうそう、お嬢ちゃんも奥手だろうしなぁ。」
仕事一徹の恋愛の‘れ’の字も無さそうなエリスと、どう見ても鈍感で奥手そうな唯では発展するのが厳しそうだ。
エリスは完全に唯を保護対象と見てしまっているし、唯もエリスを軍人だからと信じ切っているようでは男女の仲になどなるはずもなく。
夕食ではそれなりに良い雰囲気を保っていたものの先は長そうだ。
「そもそも隊長、あの子に対して過保護っスよね。」
「小さいし放って置けない感じはするけど、確かに過保護だね。」
「……多分自覚無し。」
共に仕事をしていても普段のエリスはそこまで世話を焼かない。
むしろ、その程度は自分で出来るだろうと一喝されるくらいだ。
例え少女を入院させてしまうという不始末があったとしても、あそこまで過保護になるだろうか?
四人全員の口から溜め息が零れ落ちた。
思うのはただ一つ。
「あの子だったら隊長も丸くなりそうっス。」
「スパルタってのもなかなかに疲れるよね。」
「他の部隊より厳しいもんなぁ、俺らの部隊。」
「…キツいから入隊希望者、居ない。」
エリスのスパルタを何とか緩めたいという事だけだった。Prev Novel top Next