三度目の正直(森山)

「あっしたは〜バレンタ〜イ〜ン〜♪」

作詞作曲森山由孝!と叫べば、笠松にボールを投げられた。久しぶりに朝練中の体育館に遊びに来たのにひどい始末である。

「そして!今日は俺の誕生日〜!!!」

最後にビブラートをかければ、中村に南極にいるかのような冷たい視線を浴びせられ、早川にはすごいですね!も(り)やまさん!と感心された。

例え笠松にボールをぶつけられようとも!中村に死ぬほど冷たい目で見つめられようとも!俺には関係ない!何故ならこの朝練のあと教室に行けば女の子たちがたくさーん俺を待っているからだ!教室にいけば男女比は1:1。とりあえず視界はぐっと華やかになる!

とまぁ別に誕生日だからってクラスメートの女子の人数が増えるわけでもないのに、自分のことをそう慰める森山。

誕生日を祝ってもらえないのはもちろん、バレンタインですら一年生のときも二年生のときも、今年こそ!今年こそチョコをもらえるはず!と期待に胸を膨らませて登校するも下校時にはまた今年ももらえなかった…とガックリと頭を垂れてチョコをもらっている笠松や小堀と一緒に帰ったものだ。だが。高校生ももう終わりである。最後くらい何か変化はあるべきだと、何かあるはずだと自分を信じてこの二日間は過ごす所存である。これぞ、三度目の正直である。

なんて長々と語れば、小堀はま、頑張れよと俺の肩を叩き、黄瀬はあー明日の昼休み?ごめん昼練が…と女の子を断っている様子である。笠松なんかは今年受験なんだから準備してるやつなんかいるわけねーだろ、と一刀両断された。グッ…しかし俺は負けない!と心に決めて、笠松たちと体育館を後にした。



そんなこんなであっという間に放課後である。見事に1日中何も起こらなかった。

「何で俺には何も起きないんだー!」

教室で小堀に愚痴っていると、小堀の隣の席の女子兼俺の幼馴染みであるなまえがはぁとため息をついた。

「まぁ仕方ないだろ。来年に期待だな」

小堀がそう言う。

『んーまぁ来年も火を見るより明らかだと思うけどね』

なまえがそう言う。

「もっとオブラートに!」

しくしくと泣き真似をする俺はん?待てよ。と気づく。

「なまえが俺にくれればいいんじゃん!」

俺ナイスアイデア!なんて思う。

『エッ、プレゼントもチョコも準備してないよ。皆忙しいと思って』

「今からでもいいんだぞ☆」

なんて言えば、小堀が心なしかあきれた顔をした気がしたが気づかないふりをした。

『んーイヤかな』

「何で!?」

『結構めんどくさい』

「酷いよ〜俺今日誕生日なんだよ!?」

頼みます〜となまえの足元で土下座する森山。

「…寒いしそろそろ帰るか」

『うん』

「なまえ〜!待ってよォ〜!!!」

小堀となまえが立ち上がり、仕方なく森山も立ち上がり二人と並んで歩く。途中、小堀と分かれて、森山となまえ二人だけになる。なまえが帰る方向とは違う道へ曲がる。

「あれ?なまえ?どこか寄るの?」

『え?だってチョコ要らないの?』

なまえがそう尋ねれば、森山の顔は花が満開に開くのを見るかのようにパァッと笑顔になった。

「いる!!!!」

先程の重い足取りとはうってかわってスキップしながらなまえの隣を歩く。

良かった!俺!ついに三度目の正直実現しそう!!!





『何がいいの?』

「もらえるなら何でも!」

『…そういうとこなおさないと来年もまたもらえないよ』










結局お祝いしてしまった森山。とりあえずたまには幸せにしてあげようと思ってこうなりました。森山で甘い展開は妄想できないのでごめんなさい(笑)森山誕生日おめでとう!

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