高尾に慰められる

彼氏にフラれた。

そう言ってずぶ濡れの状態で高尾んちの前で立っていた私を、高尾は急いで家にいれて、タオルでゴシゴシと私の頭を拭いて私にはでかすぎるジャージを貸してくれた。

『死ねあのバカヤロー!!』

「はいはい。嫌なことは全部吐き出しちゃいなよ」

高尾が私に缶チューハイを持ってきた。高尾はビール。

「女の子ってビールよりこういうのの方好きじゃね?」

まぁたしかにビール飲めないから私はこっちの方がいいなんて言って、プシュッと缶を開けてごくごくと一気に半分くらいまで飲む。

「すっげー飲みっぷり」

高尾はある分で足りるかな…なんて不安そうな顔をした。

『アイツなんて言葉でフったと思う!?思ってたような子じゃなかったとか言われたんだけど!!!』

キーッ!なんて言って、机にダンッ!と缶を叩きつける。高尾的には何だか俺が怒られてるような気分だ。またごくごくと飲んで俺に缶を渡すなまえちゃん。コイツ缶チューハイ二口で飲んだ…。何か心配になってきた。

「あの…なまえちゃーん…あまりにペース早くない?」

『そんなことないもーん』

いいから早く!と言うなまえちゃん。いや絶対ダメでしょ。もうちょっと静かな子だもんこの子。…まぁいいか。今日くらい。

なんて思って仕方なく2本目を渡す。バカヤローだとか死ねヤリチンだなんてボロクソ言ったらその後はなんと泣き出して。

『うう…本当に好きだったのに〜』

取り込んだ水分を出すかのようにボロボロと涙を流すなまえちゃん。まぁ本当にヤリチンかどうかとかは俺はよく知らないけどもとりあえず泣き出したので頭を撫でてあげる。

「よしよし泣け泣け〜」

『うわーん!高尾ぉ〜!』

吠えるように泣き叫ぶなまえちゃん。子供のように泣きじゃくって俺のスウェットに鼻水をつけた。え、それはさすがに困るよなんて笑った。

数時間飲みまくって泣きまくって叫びまくったらついになまえちゃんも疲れてしまったようで、ぐったりと寝てしまった。真っ赤に泣き腫らした目。家主の俺のことなんておかまいなしとでも言いたげにベッドで大の字で寝ていた。時計が指し示すのは2:30。大分夜更かししてしまった。

泣き疲れたとはいえこんな無防備に寝られるなんて俺のことなんて本当に恋愛対象としてなんて見てないんだろうなぁと考えたら俺も何だか悲しくなってきて。今日は俺が付き合ってあげたから明日は俺に付き合ってもらおう。

おやすみ、なまえちゃん。そう声をかけて毛布をかけ直してあげて。大学の友人に一件LINEして、俺も雑魚寝し始めた。




「なまえちゃーん起きてー」

『…頭いた…』

高尾の声で目が覚める。あ、そうか。私高尾の家来て大騒ぎしたんだっけ…。お恥ずかしい。時計を見ると、5時。早すぎでしょ。

『まだ寝たい…』

「だーめ。いいもん見せてあげるから出かけよ?」

布団を剥がれ、冷たい空気が私の意識を呼び戻す。仕方なくのそのそと起き上がって。

「昨日の洗濯物乾いたから着替えておいで」

高尾の言葉に頷いて、ブカブカのジャージから自分の服に着替える。あんなに迷惑かけて洗濯までしてくれるなんて本当に高尾はいい男だ。

私が着替えてる間にトーストを焼いてくれてコーヒーまで準備されていた。でもその前に水を渡される。

「二日酔い気味なんでしょ?」

素直に水を飲んで、出されたトーストにかじりつく。口内に広がるバターの味に起きた実感が湧く。

『どこいくの?』

「大学」

『全然いいとこじゃないじゃん!』

「ま、その気持ちを見事覆してやるから楽しみにしてなって」

二人で昨日はお酒を飲んだところで朝食をとる。そして準備が終われば高尾の家を二人で出た。時間はまだ6時。高尾と歩いて大学に向かって。高尾に連れてこられたのは天文サークルの部室みたいなところ。

『え?高尾天文入ってたっけ?』

「いいや。友達に特別に開けてもらったの」

うちの大学の天文サークルは所謂飲みサーで、あまりこの部室の活躍の機会はないらしい。

「なまえちゃんさ、飲みサーだから入らなかったけど実は星とか好きって言ってたじゃん。だからプラネタリウムでも見せれば少しは元気出るかなって思って」

高尾が部室の鍵を開けて、ドアノブを回す。そこにはきっと安物なんだろうが、家庭用プラネタリウムが。

「正直ここで見ようと思ってたんだけど埃っぽいから俺んち戻って俺んちで見ようよ」

なるほど。だからこんな早い時間なのか。と一人納得して。私に微笑みかける高尾に小さく頷いてみせた。

「よっしゃ決まり!」

埃を被ったその箱を高尾が少し払って持った。

『私家庭用プラネタリウム実はすごくほしいんだよね』

「さすがにあげる!とは言えねーわ」

高尾が笑った。数分後のプラネタリウムに期待を膨らませて、私は高尾の隣を歩いた。次は高尾みたいないい男とちゃんと付き合おうなんて思いながら。人通りのないいつもは賑やかな大学の廊下に高尾と私の足音と声だけが響いていた。






家庭用プラネタリウム本当に欲しいのでそのうち購入しようと目論んでます。お題ったーからお題いただきました。

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