とこやさんと三大将

とこやさんと三大将







「あららら」
「なんじゃァ」
「オ〜〜皆さんお揃いでェ〜〜」

目的地へ足を進めていたクザンは、十字路でよく見知った二人に会ってしまった。
しかも、一人の手には彼の胸ポケットに挿さっているのと同じ大輪の薔薇の花束、もう一人の手には一目見て高級そうだとわかるようなシャンパンが握られている。

「ンン〜?どうやら目的は一緒のようだねぇ〜〜?」

いつも通りのんびりした口調のボルサリーノだが、細められたその目は全然笑っていない。この後の展開を想像して、青雉は思わずこめかみを押さえた。





「ああ、そういえば。もうすぐおれの誕生日だ」

きっかけはナマエの何気ない一言だった。
散髪中の会話で、彼が何でもないことのように放った言葉にクザンは大いに驚き「なんでもっと早く言わない訳?」と立ち上がり、剃刀をクザンの肌に当てる寸前だったナマエに盛大に怒られた。
「危ないじゃないですか!」とか「この剃刀、昨日手入れしたばかりでよく切れるんですよ!」とか立腹するナマエをなんとか宥めた後も、クザンはそのことで頭がいっぱいだった。
ちらりとカレンダーを見ると、彼の誕生日まではもう一週間を切っている。どうせだったら特別なものを用意してお祝いしたかったのに。ああでもあまりお金をかけるとナマエは恐縮してしまうかもしれない。
そんなことをぐるぐる考えていたらいつの間にかお会計まで済んでいて、体調でも悪いのかと今度はナマエに心配されてしまった。

悩みに悩んだクザンは、革のホルダーケースを購入した。もとは大工職人用に作られたものではあるが、鋏や櫛も入るだろうし何よりも華美な装飾のないシンプルな造りをきっと彼は気に入ってくれるだろうと思ったのだ。

ついでに夕食でも誘おうと、プレゼントの箱を片手にナマエの店へと向かっていたところでサカズキとボルサリーノにばったり遭遇したと言うわけだ。





ツカツカツカツカ。

「あのさぁ、ナマエのプレゼントは俺が渡しておくから二人とも帰ったら?」
「おどれはあいつの保護者か」
「まぁまぁ落ち着いてぇ〜〜」

三人分の足音と、言い合う声が響く。

「わっし、夕食の店の予約もしてるんだよぉ〜〜」
「はァ?」
「どうせナマエ本人には確認してねぇんだろ?」

長い足をせわしなく進め、お互いの顔を睨みつけ牽制し合いながらナマエの店へと急ぐ三大将の姿は、どこからどう見ても異質であった。
この角を曲がるとナマエの店だ。彼が誕生日に誰と過ごすことを選ぶのか、それがもうすぐわかるのだ。
遠目に彼の店が見える。ちょうどクローズの看板をかけるためにナマエがベルを鳴らしてドアから顔を出した。

「ナマエ」

三人で声をかけると、ナマエはぱっとこちらを見やりすぐに笑顔を見せた。

「お疲れ様です!皆さんお揃いでどうしたんですか?」

その笑顔に三人とも思わずつられて笑顔になる。が、ナマエの後からのっそり現れた姿にその笑顔はさっと曇った。

「……センゴク元帥…?」
「おお、お前らが仕事終わりに揃ってるとは珍しいな」

なぜ、ここに仏のセンゴクが?思考が追いつかない三人にナマエがとどめの一言を放った。

「センゴクさんがおれの誕生日祝いにお食事に誘ってくださったんです!!」

皆ににこやかに会釈をしつつ、センゴクの後を追って去っていくナマエを、三人はぼんやりと眺めるしかなかった。


人気のお店でもったいないから、というボルサリーノの提案で、その日は彼が予約した店で三大将が顔を付き合わせて食事をするというさらに異質な光景が広がったのである。

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