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  21


ルッチさんもカクさんも任務ということで呼び出しがあり、その後文句をブツブツといいながらも去っていった。めったに会うこともないから…しばらく会えないだろうと思うと、少し寂しさもかんじる。

なんて、ぽけーとベッドの上で考えるのは、明日からようやく仕事へ復帰できるから。
長かったこの謹慎(休暇)も終わり。怪我もほぼ完治したし、体を任務に戻していかないと…そんなことを思いながらも休みが終わる残念感も僅かながらにあって。
最後にゆっくりしようと思っているところだ。


外を見るともう月が出始めている。
そんな時間に、窓にカンっと何かがぶつかる音。

「…?」

窓の方に目をやるけれど、何かいる気配もない。(今日みたいにカクさんが立ってることもない)
気のせいか、と目線を別に送ると、再びカンっという音。
今度こそ気のせいではないとわかり、窓にそろそろと近づく。徐に窓を開けて周囲を見渡すが、何かが飛んでいるわけでもないし、雹が降っている訳でもない。

「ニナ」

自分の名前がはっきり呼ばれたことに気づき、声の主を探す。下から、…?

「サボ…?」
「よ!」

そこに立っていたのは、数日前に私の前に現れたかと思えば、赤犬さんの気配を察知してすぐに姿を消してしまった彼。にっとお得意の笑顔で私を見上げている。(私の家の場所がバレていることは…触れないでおく)
しかし、こんな上から大きな声で喋っていいような相手ではないことを百も承知の私は、ばたばたと急いで上着を着て、下に下りる。玄関を出ると、数日前と変わらぬ姿で私をサボが待っていた。

「わざわざ降りてきてくれてありがとう」
「大きな声で話せないでしょ」
「まあ、バレたらバレただけどな!」

ししっと笑う彼は、やはりあの人たちの兄弟なのだなあ、と実感させられる。そっくり。

もう少し話したいんだ、と私の手をするりと取るとそのまま歩きだしたサボ。手を引かれ、そのままわたしも隣を歩き出す。
そこからサボからの質問攻めだ。だけど海軍で何してるんだとか、最近捕まえた海賊のこととか、普通に好きな食べ物とか趣味とか。他愛もない話。サボはずっとニコニコしながら私の話に耳を傾けていた。聞き上手だなあ。
もちろん、私は海兵。彼は革命軍。休暇中でなければ敵にあたる人物。海軍の情報になりすぎることは喋らず。できるだけプライベートに寄せるように話しを仕向けたつもり。
…そこはね、海兵としてちゃんとしなきゃ。

「ニナは、真面目だな」
「…嫌味?」
「違う違う。それに俺は今、革命軍として話をしてる訳じゃない。1人の男としてお前のことを知りたいんだ」

大丈夫大丈夫とへらりと笑う彼は、なんともそれらしい。疑う気持ちが削がれてしまう。
けど、まあ線引きはしておこう。

手を引かれて連れてこられたのは、サボとあったあの崖の上。太陽に輝くのも綺麗だけど、月夜に照らされる花たちもとても綺麗で、うっとりする。
もう完璧にサボにバレてしまったことには…少し、がっかりしているけれど。

「ここ、綺麗だよな。」
「そうでしょ。私の自慢の場所。」

少し嫌味だったかな、と思いながら彼を見上げると、少し困ったように笑いながら悪かったよ、と言葉を紡いだ。
それが本当に申し訳なさそうなものだから、私はため息をひとつ落としてベンチに腰を下ろす。まあ…ここが荒らされなければ、それでいいか。この人は、そういうことをする人ではないことは…分かる。

「俺も気に入ったよ。ここが」
「そう?」
「ああ。すごく。また来ていいか?」

そう優しい微笑みで私を見下ろす。
月の光とふわふわとした金髪が輝きあって眩しく感じてしまう。その問に私はご自由にと返事をすると、「つれねェなあ!」と笑った。

「太陽にも月にも、雨にも。どれにでも似合う花だな、これは。」
「そうなの。だから、落ち着く」

サボはしゃがみこんで、一輪花を採った。それに鼻を近づけて匂いを嗅いでいる…姿は、まるで王子様のようだ。(気品もあるから、尚更)

「ここは、ニナ以外の人は知らないのか?」
「ええ、人が来たことはないし。あまり知られていないことは事実よ」
「そっか!じゃあここは、俺とニナだけの秘密だな」

私の隣に腰を下ろして、ハニカミながらそういうサボ。本当に、王子様みたいにキザなこともいうんだな…なんて思わないと、顔が赤くなって自分も照れていることがバレてしまう。
そう、さっとサボから目を離すと、サボの手が私の髪を耳にかけてきたものだから、びくりと体を震わせた。

「なっ…に?」
「…この花は太陽も月も、雨も似合うけど」

一番、ニナに似合ってる

耳元に差された一輪の花。それを触れるがまま、頬を撫でてくる大きな掌に、心臓が高なった。
そんな私を見て、サボはふっと笑顔を見せると、ベンチから立ち上がって崖へ歩いていった。

「ニナ!」

名前を呼ばれてびくっとベンチから立ち上がると、その私の反応を面白がってけらけらと笑われた。それにむっとしながらなによ!と言い返すと、私をもう一度見据えて、サボは言った。

「今度はここへ…ニナに会いに来るよ。」

そう温かく微笑んだ彼は、その直後、どんどんとカラスに体を攫われていき、じゃあな、という声を最後にその場から去っていってしまった。
…今度、か
次に彼と会うのが、「敵」としてではないことを少しだけ祈りながら、耳元に差された一輪の花を指でするりと撫でた。









夢よりも透明に











ここで、会えれば…きっと


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