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  18


「何故あの女にそんなにこだわる?」

丸い目が俺を見据える。
他意はない、単純な疑問。
そんな様子で俺にくだらない質問をぶつけてきたカク。コイツは確か、あまり多くニナと接点を持っていない。
…むしろ、明確に敵意を向けているというイメージを俺はもっていた。その理由は知ったことではないが。

「興味があるのか」
「いや?あの女をどうこうする気はわしにはないわい。」
「では無益な質問をするな。時間の無駄だ。」
「…無益なのは、あの女のところに行くことではないのか?」

「……何?」

やはり、コイツはニナをあまり気に入らないらしい。安い挑発であることはわかっているが、カクのその一言に思わず眉間に皺が寄った。長い付き合いだ。そんな俺にもひるむこともなく、悪びれもなく俺に向けられている目線。立った襟に隠れた口元が、少し歪んだ。

「そんなに睨むな。単純な疑問じゃ」
「…何が言いたい」
「わしらサイファーポールは、利用できるものを利用すりゃいいはず。わしには、あの女に利用価値は感じん。それだけの話じゃ」

カクの言うことには、一理ある部分もあるニナは、戦闘力から測れば、強いというわけではない。少佐という地位であり、ここから昇進することはあまり期待できないと俺も思っている。(今現状の話だが)俺達サイファーポール側から利用できる強さであるのかというと、そうではない。

故の、疑問。

「…のう、ルッチ。」
「…」

「お前さん、”本気で”あの女を」

任務としてでもなく、CP-0の一人としてでもなく
ロブ・ルッチとして


「そうだ」


まっすぐ目を見据えた、一言。
そこからしばらくの沈黙の後、目を先に逸らしたのはカク。何も言うことなく、くるりと後ろを向いて俺から離れていく。ハットリがポッポーと鳴き声を上げると、その足がピタリと止まった。

「わしには、…よぉ分らんが」

お前に、そう思わせるほどの女なんじゃな

振り返ることもなく、そう俺に言い残して去っていったカクは、妙に意味深だったのを覚えている。






―――――だから

「のう、ニナ。わしあのカステラ食いたい」
「あ、あれもおいしいんですよね。期間限定の味も最高でした」
「ほほう。今度手に入れておいてくれ」

……ここまでコイツらが急接近することになるとは、想像もしなかったのだ。








Un anticipation










むやみにくっつくんじゃねェ


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