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『悪ィニナ!!ドジった!!!』
ただそれだけの連絡が今朝私の電伝虫に入って、数時間。
いったいロシナンテさんが何をドジったのか、目の前の状況を見て理解した。
「き、今日は七武海の集会はないはずだ!」
「フッフッフ…!!いい加減にしろ…俺はニナを探しているだけだ…」
「う、うわああやめろ!」
海兵たちを吹き飛ばしていくドフラミンゴ。
その表情はもう、悪魔のような、不機嫌な顔をしていて。
私は急いで止めに入った。
「ど、ドフラミンゴ!!他の海兵に手を出すのはやめなさい!」
「―――あァ、ニナ」
ピタリ、とイトイトの能力が発動されているだろう右手を止めて、私の方に目を向ける。
今日は一段と、サングラスで表情が読めない。
操られていた海兵はがくんとその場に倒れ込んだ。
そして、その代わりに、私の動きがぐっと封じられたことを実感する。
「ッ…こんなことしなくても、逃げないわ、私…」
「…」
ドフラミンゴの指先がくんっと動くと、操り人形になった私は、ぎこちなく彼の方へ歩みを進める。
ドフラミンゴはテトラポットに腰を掛けたまま、口元をゆがませたままただ指先を動かしている。
そして、そのままぽすんと彼の膝に向かい合わせの形で座らされた。
何、という目線を送ると、彼独特の高笑いをして、能力をといた。
ふっと体の力が抜けて、体制を崩しそうになると、がしりと腰を掴まれる。
「よォ、元気そうだなァ」
さっきまでの不機嫌はどこへいったのか。
ドフラミンゴはニヤニヤとした笑みを浮かべて、私を見下ろす。
今朝のロシナンテさんの電話は、絶対彼のことについてだろう。
まあ、ドジったって言ってたから、ドフラミンゴに伝えるつもりはない話だったのだろう。(きっとセンゴクさんあたりにかけようとしたと予想する)
「…ロシナンテさんから何か言われたの」
「フッフッフ、確かに今朝、ロシーから連絡を受けた」
お前がぶっ倒れたっていうな
やわ、と腰をなでられながらぱちくりと彼の顔を見つめる。
まさかと思い、私は溜息を大きく落とす。
あれだけ覇気で脅しながら、他の海兵を能力で操って、あんなに不機嫌そうな顔をしていたのは…。
「…心配?」
「あァ、」
「………」
頭を抱えた。
どうしてこう、自分勝手な人達ばかりなんだろうか。
私が心配だというのなら、集会のときに絡んでくるように普通に声をかければいい。お菓子でももらいにくればいい。なのに、ここまで騒ぎ立てて…
「赤髪のヤツにやられたんだろう」
…少しドスの利いた声が落ちてきて、ドフラミンゴを見上げると、口元はいつものように歪んでいるのに、眉間には深いしわが刻まれていて。
いつものような余裕はまったくなさそうに見えた。
ロシナンテさん、本当に余計なことだけ彼に話してくれてしまったようだ。
「お前を好きにできるのは俺だけでいい」
「…何それ。ワガママ」
「フッフッフ!ワガママで結構!海賊だからなァ」
ぐっと彼のがっしりとした腹筋を押して後ろにぴょんと跳ぶ。
彼はそれを無理やり止めることはしない。
すたりと、着地してドフラミンゴを見上げると、テトラポットから重そうに腰を上げた。
ちら、とドフラミンゴに踵を返してから、私は何も言わず自分の執務室へ足を運ぶ。ドフラミンゴは笑いながら私の後をついてきた。(歩いているだけで、他の海兵を威圧するのはやめてほしい)
「っててて…あッ!ニナ!…と、ドフィ」
「……ロシナンテさん」
「よォ、ロシー。今朝は貴重な情報ありがとなァ」
私の執務室の前で思いっきりこけている人物…実際一人しか思い当たらないと思っていたら、やはりそれはロシナンテさんで。
ドフラミンゴが今日ここへやってくる要因をつくった張本人を睨みつけると、私とドフラミンゴを交互に見た後、「すまん」と申し訳なさそうにいうものだから、ら許してあげようと思う。(ロシナンテさんのドジがこれだけで済むだけまだましなのだ)
「またお前は…海賊がいていいところじゃねェんだぞ、ここは!」
「うるせェ奴だ。俺は俺がしてェことをするだけさ…。ロシー、燃えてるぞ」
「え、っあぢぢち!!!」
…騒がしい。
から、もう追い返そう。
そう思い立って私は執務室から彼らへとお菓子を持ち出してくる。
慎重が高い彼ら兄弟からすると、小さく見えてしまうけれど。
すくいあげたそれぞれの手に、一つずつピンクと白のマカロンを乗せてやる。
「お菓子あげるからあとは帰ること!」
「フッフッフ!!お前には、敵わねェなァ」
「俺にもいいのか!ありがとうニナ!」
この兄弟の180度違う反応もすごいよなあ。
そんなことを思いながらも、嬉しそうにする二人の顔は、やっぱり兄弟だと思えるもので。
そしてそのあとは素直にそれぞれ帰っていくものだから、なんだかこっちが満足してしまったのだ。
血筋は争えないかわいいと思ってしまった
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